『スウィング②』 [noisy life]
♪ 楽しいお方も 悲しいお方も
誰でも好きな その歌は
バドジズ デジドダー
この歌 歌えば なぜかひとりでに
誰でも みんな浮かれだす
バドジス ドデジダー
トラムペット鳴らして スイングだして
あふればすてきに 愉快な甘いメロディ
ラゝ…… ダドジパジドドダー
ドジダジ デジドダー
歌おうよ楽し この歌を
…………
（「ラッパと娘」曲、詞、服部良一、歌：笠置シヅ子、昭和１５年）
スウィングが大ブレイクした大きな要因として、それがダンス・ミュージックだったからということがあげられます。当初の演奏はほとんどがビッグ・バンドで、場所はダンスホールや大きなキャバレー。聴衆は熱狂的なダンサーでもありました。スウィング時代を語るとき、欠かさず出てくるのがジタバグ（日本語ではジルバ）の存在。ジタバグは、熱狂的に、時にはアクロバチックに、スウィングにのって踊りまくる聴衆のこと。なかにはミュージシャンたちの邪魔をする、たとえばサッカーのフーリガンのような輩もいました。
スウィングが衰退していくのは１９４０年代後半。ということは、日本が「欲しがりません勝つまでは」と超ストイックな生活を強いられていた時代、アメリカ人たちは、スウィングに合わせてジルバを踊りまくっていたというのですから、あゝ……。スウィングが廃れていった原因は、いくつかあげられています。ひとつはジャズメンたちが徴兵されたこと、もうひとつは、ダンスホールが課税され、営業できずに閉鎖する所が増えたこと。さらには、熱し易きは冷めやすしで、飽きられたということもあげられます。しかし、スウィングは死んでもジャズは死にません。なぜならスウィング＝ジャズではないから。ビッグバンドはコンボ編成に変わっていき、スウィングはビバップを産み落とし、ジャズはさらに発展していくことになります。
実は、日本にもスウィング台風は上陸していました。昭和１３年(1938)、ベニー・グッドマンが出演した映画「ハリウッド・ボール」が劇場公開されるや、日本のジャズメンたちの話題となり、とりわけジーン・クルーパーのドラミングはこぞって真似をしたとか。それから２、３年の間、日本各地のダンスホールや劇場でスウィングが演奏されます。なかには当時レビューに力を入れていた吉本興業や宝塚歌劇団、あるいは松竹楽劇団でもアメリカ仕込みのスウィングが演奏され、スターたちが「シング・シング・シング」を歌ったとか。その松竹楽劇に所属していたのが笠置シヅ子。
笠置シヅ子は大正３年(1914)、香川県生まれ。小学校卒業後大阪松竹楽劇部の養成所に入り、昭和２年１２才で舞台デビュー。昭和１３年、松竹楽劇団ができるや“スイング・シンガー”として大ブレーク。当時の辛口の評論家から絶賛され、文化人たちに「笠置シヅ子を見に行こう」とまで言わしめたとか。当時の彼女は２４才。
彼女の笠置シヅ子としてのレコードデビュー曲でスキャット入りの「ラッパと娘」や「センチメンタル・ダイナ」、「ホット・チャイナ」（いずれも服部良一作曲）はスウィング感に満ちあふれています。レビューでしばしば歌ったという「シング・シング・シング」は残念ながら音源が残っていません（多分）。一度聴いてみたかった。
しかし、残念なことに、昭和１５年になるとダンスホールが閉鎖され、アメリカン・ミュージックも禁止され、スウィングは実を結ぶどころか開花まえに萎んでしまったのです。もし、日本が太平洋戦争へ突入していかなかったなら、日本でもスウィング熱がさらにひろまっていったのではないでしょうか。それと、昭和１６年から２０年までの５年あまり、他のシンガー以上に歌う機会を奪われた（ジャズ中心だったので）笠置シヅ子は２７～３１才で、最も充実した活動が可能だった時期。戦後、“ブギの女王”として大ブレークし一時代を築きますが、それにしても５年間の空白。“もし……”という恨みは残ります。
大ヒットした「東京ブギウギ」のときが３３才。昭和３１年、最後に「たよりにしてまっせ」を吹き込んだあと引退。そのとき４２才。紅白歌合戦には４回出場し、最後の昭和３１年は「ヘイ・ヘイ・ブギ」でトリをつとめました。以後、俳優に転向。ナツメロ番組を含め、その後いっさい歌を唄うことはなかったといいます。昭和５６年逝去、享年６７才。
戦後も写真でしか笠置シヅ子をしりませんが、そのステージでの容貌（上にのせた写真など）はどこかオバサンっぽい感じを受けたものです。しかし、昭和１５年前後、まだ彼女が２０代半ばの舞台写真を見ると、まさに時代の先端を行っていたモガが写っていました。
大好きな歌です。
スカパラでギムラさんが歌ったのがキッカケでした・・。
by ROOSTER OF JOYTOY (2007-05-14 22:30)
ROOSTERさん、はじめまして。nice!とコメントありがとうございます。
戦後のものでもいいですから、笠置シヅ子のフルコーラスを映像で見たいものですね。とくに彼女の場合はボディアクションが見たい。
by MOMO (2007-05-15 22:44)