『７０年代歌謡曲④』：Picture on the Wall：SSブログ

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『７０年代歌謡曲④』　[noisy　life] [編集]

♪　夕暮れの街角　のぞいた喫茶店
　　微笑み見つめあう　見覚えある二人
　　あの娘が急になぜか　きれいになったのは
　　あなたとこんなふうに　逢ってるからなのね
　　好きだったのよ　あなた　胸の奥でずっと
　　もうすぐわたしきっと　あなたを振り向かせる
　　気のない素振りして　仲間に加わった
　　テーブルをはさんで　あなたを熱く見た
（「まちぶせ」詞、曲：荒井由実、歌：石川ひとみ、昭和５６年）

久しぶりに“そば友”と会見（とゆうほど大袈裟ではありませんが）。
場所はもちろん７０年代の雰囲気に浸れるいつもの中華飯店。入店するや、マスターというかチャイニーズのお兄さんが「イラッシャイ」と熱烈歓迎の笑顔。
注文をして、いきなり聞こえてきたのはアイドル歌謡……、まではわかるけど何の歌だっけ。なんだか今日はボリュームが小さくて聞き取れません。
いつになく口数の少ない“そば友”。知ってます。彼が大きな悩みを抱えていることを。家庭崩壊、離婚の危機。以前から奥さんとの気持ちのすれ違いを幾度となく聞かされていました。それが、このところ沈黙ぎみ。深刻の度合いが深まれば反比例して言葉が失われていきます。奥さんとも顔見知りだけにつらい。
沈黙の隙間に流れ込んでてきたのは聞き覚えのある曲。石川ひとみの「まちぶせ」でした。

昭和５６年、１９８１年。ちょうど二人が知り合った頃ではなかったでしょうか。彼がニューヨークへ出張したとき、観光で来ていた奥さんと出逢った。奥さんのひと目ぼれ（彼曰く）で、帰国してから猛烈な電話攻勢。彼はあっさり落城。ロマンチックなラブ・アフェアーは、わたし達周囲の者を羨ましがらせたものでした。
それが四半世紀を過ぎ……。それ以上言うのはやめましょう。

「まちぶせ」は御存知ユーミンこと荒井由実の作品。たしか、石川ひとみとアイドルの三木聖子の競作（聖子の方が早かったかも）だったような。石川ひとみ、はじめは倉田まり子との区別がつかなかったっけ。それはともかく。なんとなく控えめで、それが印象に残っているシンガーでした。ほかでは小ヒットした「くるみ割り人形」、西島三重子作曲の「あざやかな微笑」、宮川泰作曲の「右向け右」などなど。
好きな彼には彼女がいる。でも、あきらめられない。いや、あきらめない。かといって、二人の仲を壊そうとはしない（たとえ願っていても）。じっと待つ。そして彼女が去ったあと、急接近せずに、彼の気を引きながら徐々に……。という、ありがちな女性の心理と行動を上手に描いています。昔だったら、黙って引き下がりひたすら耐えて相手の幸せだけを祈る、というのがステロタイプでした。「まちぶせ」ではっきり時代が変わったのだと実感しました。それをすばやくすくい取ったユーミンは見事。

あれから２０数年、時代はさらに変わりました。「まちぶせ」のヒロインは一歩間違えるとストーカーに。
ほかにもあります。♪うしろ姿を着けていく　という「明日があるさ」（坂本九）はもちろん、♪放課後の校庭を走る君がいた　の「初恋」（村下孝蔵）だってストーカーと言われかねません。以前は、そんな歌がいくつもあり、抵抗なく聴きかつ歌っていたのに。それがいまでは……。
恥ずかしい話、わたしだって若い頃はストーカーまがいのことをやったことがあるし、自慢じゃないけれどされたことだってあります。恋は盲目っていうじゃありませんか。それが恋に落ちる、狂うということ。
もちろん、そういう行為のすべてを許容するわけではないけれど、世間はいささか過剰反応気味で、それでなくても勇気が萎んでしまいがちな恋なのに、さらに臆病になっている若者が増えてるんじゃないだろうか、などとあらぬ心配をしてみたり。

“そば友”の奥さんだって若い頃、彼に夢中になり何も手につかず、居ても立ってもいられずに彼の部屋へ押しかけたことだってあるんじゃないのかなあ。本当はその逆だったのかもしれないけれど。とにかく、そういう頃を思い出してもう一度っていうのは無理な話なんでしょうか。余計なお節介ですけどね。

この日、有線から聞こえてきた他の曲で、覚えているのは「うちのお父さん」（南こうせつとかぐや姫）と「ダンシング・ヒーロー」（荻野目洋子）。荻野目洋子はとんと見ませんが、どうしているんでしょう。

2007-05-11 21:42 nice!(1) コメント(4)
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