『ブルース①』 [noisy life]
I wonder will my baby ever come back to me.
I wonder will my baby ever come back to me.
You know she got my mind wandering just like a ship out on the sea.
Yes, I am gonna wander now. I just got play it.
……
([WALKING BLUES] words, music, and vocal by LIGHTNING HOPKINS)
ブルースBlues はアメリカン・ミュージックに興味を持った人は、かならず立ち止まるジャンルです。だいたいの本には「正式には“ブルーズ”」と書かれているが、それでも“ブルース”で書きすすめられているのは、“ブルース”が定着しているから。発音で言えばほかでも、たとえば[Close-up]は日本語で書くと“クロースアップ”ですが、“クローズアップ”が慣例になってしまっているので、そう表記されることが多い。ということで、詳細は専門書に譲るとしてブルースの概略を。
まず、間違いないことはブルースがアメリカの黒人によって作られたということ。歌われ始めたのは１９世紀後半、リンカーンによる奴隷解放宣言以後。それ以前に黒人霊歌やワークソングは存在したので、単純にブラック・ミュージックのルーツということはできません。発祥の地はミシシッピー州を中心としたアメリカ南部。歌われる内容、つまり当時の歌詞は、貧困、差別あるいは失恋による疎外感に対する嘆き、悲しみ、苦しみ、愚痴。生きる辛さを歌で紛らすというのは普遍的な感情の発露でした。ただ、歌詞は当然その環境や生活が反映されるので、当然時代とともに変わっていきます。
また、その詞はよくいわれるＡＡＢ型の三行詩。つまり一行目で何かを訴えかけ、二行目はそれをくり返し、三行目で結論を言うという具合に。音楽的には、それが各四小節、つまり全部で十二小節で構成されてます。そのコード進行は、基本コードをＣとすると〈ＣＣＣＣ7／ＦＦＣＣ／Ｇ7Ｇ7ＣＣ〉に。また、３度と７度（長調ならミとシ）が半音下がるブルーノーツと呼ばれる音階もブルースの特徴といわれます。ただ、これらはあくまで基本的な要素で、変形はあります。
なぜブルースが音楽の中で、重要な位置を占めるのかというと、それはその後の、つまり２０世紀、２１世紀の音楽に多大な影響を及ぼしたからです。そのひとつがジャズであり、もうひとつがロックン・ロール。さらにいえばリズム＆ブルースやソウルなど。ですから、“言葉の遊び”で言えば、もしアメリカの白人たちがアフリカから黒人を奴隷として連れてこなかったら、コルトレーンもチャック・ベリーも生まれなかった、ということになります。もちろん、ベニー・グッドマンもプレスリーも。まさに歴史の皮肉というものでしょう。
よく聴いたのは７０年代。流れとしてはロックンロール→カントリー→ジャズ→ブルースでした。エルモア・ジェイムス、ライトニン・ホプキンズ、チャンピオン・ジャック・デュプリー、サニーランド・スリム、スリーピー・ジョン・エスティス、マディ・ウォーターズなどなど。とりわけアコースティックも駆使したライトニン・ホプキンズはよく聴きました。
１９１２年、テキサス生まれのライトニン（生きていれば９５歳）。彼は子供の頃からギターに親しみ、テキサス・ブルースの確立に貢献したといわれるブラインド・レモン・ジェファーソンに影響されて、ブルースを弾き語りしていた。そして、本格的にI got the blues つまりブルースにとりつかれたのは１８歳、ラバを使って畑を耕しているときだとか。よくいわれる“天啓を受けた”というやつです。そして４０年代半ばからブルース・シンガーとしてレコーディングを始めますが、５０年代になると徐々にその存在を忘れられていきます。それが再び脚光を浴びるようになるのは、６０年代に入ってから。ブルース・マニアやコレクターたちの“掘り起こし”によるものでした。
ライトニン・ホプキンズの魅力は、ライナーノーツや関連書籍によると、身近な生活に根ざした歌詞、卓越したギター・テクニックと即興の才能ということです。こればかりは聴いてみないことには分かりません。音楽評論家の中村とうようさんは、その著書の中で、ライトニンのブルースについて、「汚くて、下品で、いやしくて、アクが強くて―だからこそ、ブルースならではの美しさの極致を感じる……」と書いています。
nice！ をどうも。
こすっからいヤツは度し難いですね。
by MOMO (2007-05-09 22:49)