『ＫＡＲＡＯＫＥ』 [noisy life]
♪ 待ち合わせて 歩く銀座 灯ともしごろ 恋の銀座
僕と君がうつるウインド 肩を寄せて指をからませ
二人の銀座
ふれあう頬 夜の二人 甘いかおり 熱い二人
みゆき通りすずらん通り 何も言わずときめく胸の
二人の銀座
銀座 ふたりだけの
星もネオンも 僕と私のもの
（「二人の銀座」詞・永六輔、曲・ベンチャーズ、歌・山内賢、和泉雅子、昭和４１年）
昨日２８日は今年最後の忘年会。メンバー３人。毎年締めはこのメンツ。
３０年来の友人。ひとりはちょうど１年前胃を全適して生還したＦ。もうひとりは２年前ハシゴから落ちて腰骨を折り、ボルトをいれたままのＭ。わたしだって、５年前にクルマにはねられてる……。ってそんなこと自慢にしてもしょうがないか。
花の東京のど真ん中……と歌われたＵ駅の大衆酒場へ７時集合。ほぼ時間通りにいくとお酒大好きのＭがすでに席を確保していました。店はほぼ満員。閑散としていた去年とはえらい違い。少しは景気が良くなったのかな。５分ほどしてＦが来て全員集合。Ｆとは１年ぶり。思ったほどではないですが大分スマートに。
「いいダイエットになったじゃん」
とわたしの軽いジャブ。
「おかげさんで。健康的な生活やってます」
そう言うなり、いきなりタバコをスパスパ、焼酎グビグビのＦ。なんも変わってません。
話はなるべくしてＦの病気の話。癌、入院、手術ときて、行き着くところは看護婦さん。
「担当の看護婦さんは毎日チェンジ。新鮮だよね、そこらのキャバクラよりずっといいぜ。それがみんな可愛くて、優しくて。もしかして俺だけに？ なんて思ったりしてさ。全身くまなく拭いてもらうときなんか、申し訳なくてな」
「なとき、やっぱ意志に反して男の子の自己主張をしちゃうわけ？」
「それどころじゃおまへん。胃を全部とっぱらて３日目だぜ。管だって入ってるのに、んな元気あるわきゃない」
そんなバカ話をしながら、気がつくとシンデレラタイム間近。店から追い出されるように３人は夜の街へ。山手線でＦのホームグラウンドＭ駅へ。Ｇ坂をしばらく下ったところにある、Ｆが２０数年通っているというバーへ。閉店間際を強引に乱入。中はママさんひとりだけ。乾杯もそこそこに女大好きのＭがママさんを口説き始めます。
「やっぱり、連れてくるんじゃなかった」
とＦ。
石原真理子の暴露本から始まって、話のテーマはＭｙ Ｉｄｏｌへ。
ちなみにＦは「芦川いづみ」、Ｍは「本間千代子」、わたしは「桜町弘子」。……歳が分かるなぁ。
「私は、舟木一夫も西郷輝彦も橋幸夫も大嫌い。園まりも伊東ゆかりも中尾ミエもどこがいいのかわからなかった。えっ、石原裕次郎？ まるでイカさない」
とママさんが大胆にも反アイドル宣言。へえ、そういう人もいるんだ。
「そんじゃ、好きな俳優とか歌手とかいないわけ」
「そうね、井上陽水かな。それも最近のね。おもしろそうな人じゃない。あと、吉田拓郎もいい。こないだコンサートやったでしょ、アレＴＶで見ちゃった」
ちなみに、わずかの差だが年齢はママさんがいちばん上。
話もつきたところでカラオケ大会。
さすが長いつきあいのＦがママさんへの想いをこめて陽水の「傘がない」。するとＭも負けじと「今日まで そして明日から」。私は定番の「お花ちゃん」。
「お花ちゃん」は誰知ろう三橋美智也と斎藤京子のデュエットソング。別に意図したわけではなく、カラオケはノリのいいこの歌から始めることにしているのです。
さっそくママさんが私の横に。あまり知らないようでしたが、私のリードで無事完唱。もちろんＦとＭからはブーイングの礫。それならばとＭが石原裕次郎＆浅丘ルリ子の「夕陽の丘」、Ｆは五木ひろし＆木の実ナナの「居酒屋」。となればわたしも流れに沿ってフランク永井＆松尾和子の「東京ナイトクラブ」。というわけでフロアはデュエット大会の戦場と化してしまいました。大変なのは紅一点出ずっぱりのママさん。
「都会の天使たち」「赤いグラス」「ヘイ・ポーラ」「いつでも夢を」「星空に両手を」、「わが愛を星に祈りて」「新宿そだち」「二人の銀座」……。
ついにママさんマイク拒否。
それでもわれわれはマイクを離しませんでした。男同士の「男と女のラブ・ゲーム」「愛が生まれた日」「銀座の恋の物語」「浪花恋しぐれ」「もしかしてpart２」と、もうしっちゃかめっちゃかで、何のことやら……。
気がつけば午前４時。その間にママさんの「そろそろ閉めたいんですけど」という声を２、３度聞いたような。ママさんが泣き崩れる前にわれわれは退散することに。
Ｍ駅へ戻ったもののあたりは暗く始発にはまだ間がある。
「さあ、これからだ！」
と叫ぶＦの後をついていくＭとわたし。３人は駅前のビルに入り、性懲りもなくカラオケボックスへ続くエレベーターへと乗り込んだのでした。
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