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【トッパー】 [obsolete]

『読者諸君は、先刻御承知の通り、お竹さんは病院から、出たばかりで、この寒空にトッパーすら着ていない身である。
 みすぼらしいのは、いうまでもないが、相手の奥さんにしても、相当なものである。少なくともここ十日ほどは。碌に髪の手入れもした様子はない。……』
「三行人生」(藤原審爾・昭和28年)

ファッション、とりわけ女性の服飾の変遷を見ているだけで時代の移り変わりを感じることができる。「トッパー」といっても、フットサルで使うスニーカーのことではない。トップ・コートの略称で、女性用のハーフコート、半オーバーといったほうがわかりやすいかもしれない。昭和27年ごろから女性用の短いコートをトッパーと呼ぶようになったらしい。ただし当時は男性用もあったようだ。トッパー姿で思い浮かぶのは、冒頭の写真にある映画「挽歌」のヒロイン・兵藤玲子(久我美子)である。しかし、原田康子の原作では『わたしは着替えもせず、ハーフコートだけをはおって、……』というようにトッパーという言葉は出てこない。いまでもハーフコートの女性をみかけることがあるが、トッパーとはいわないのだろうか。

『三行人生』は岡山から都会の医院へ女中(これも廃語か)志願に来た“お竹さん”のユーモアとペーソスに満ちた怪行ストーリー。「トッパー」以外にも、「赤いビロードのシャツ」とか「ちんちんくりんな黒いオーバー」とか「羅紗のジャンパア」など(いずれもメンズ)と当時のファッションが偲ばれる描写がある。ちなみにヒロイン・お竹さんの登場シーンは「久留米絣のワンピースにリュックサックを持った……」という具合である。


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