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その名は●ルーシー [the name]

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The morning sun touched lightly on the eyes of Lucy Jordan
In a white suburban bedroom in a white suburban town
As she lay there 'neath the covers dreaming of a thousand lovers
Till the world turned to orange and the room went spinning round.

At the age of thirty-seven she realised she'd never
Ride through Paris in a sports car with the warm wind in her hair.
So she let the phone keep ringing and she sat there softly singing
Little nursery rhymes she'd memorised in her daddy's easy chair.
………………
([THE BALLAD OF LUCY JORDAN]lyrics and music by SHEL SILVERSTEIN, vocal by MARIANNE FAITHFULL, 1980)

「ルーシー」という名前を聴いて50代以上の人が思い浮かべるのは往年のテレビ番組「アイ・ラブ・ルーシー」や「ルーシー・ショー」かもしれない。最近衛星チャンネルで再放送されているので若い人も知っているかもしれないが。

どちらもアメリカの喜劇女優、ルシール・ボール LUSIL BALLl 主演の番組。日本では前者が昭和32年より、後者が38年より放映された。
わたしが覚えているのは「ルーシー・ショー」の方で、それもチラチラ目に入っただけで、楽しみにしていてい見たという記憶はない。多分裏番組を見ていたのだろう。
ただ、劇中しばしば起こる笑い声に観客がいるのだなぁと本気で思っていた。

アメリカでも日本でも高視聴率を記録した番組だが、個人的にはあまり印象がない。それよりも印象深く残っているのはルーシー・ヴァンペルトLUCY VAN PELTのほう。
チャールズ・M・シュルツの漫画「ピーナッツ」に出てくる女の子。

よくいえば批判精神が旺盛。反対から見ればちょっと意地悪で口がわるい。ということは頭がいいということで、有料(5セント)で“悩み相談室”を開設するほど。また、“天才ピアニスト”シュローダーが好きなのだが、彼にはいつも軽くあしらわれる。しかしそんなことではまるでめげない。

始終そばにいるとキツイけど、たまに会ったり、遠くで見ている分にはとてもカッコいい女の子だ。
もっともルーシーだけではない、スヌーピーはもちろん、愛すべきチャーリー・ブラウンをはじめとして、ペパーミント・パティとその妹分のマーシー、、ルーシーの弟のライナス、そしてスヌーピーと彼の友人のウッドストックと、登場するすべてのキャラクターが魅力的なのが「ピーナッツ」なのだ。それぞれが自分の意見をもっている。そういう意味では自立している子供たち(動物もいるが)。
日本にはなかなかない子供たちの人間関係であり、やりとりなのだが、さくらももこの「ちびまる子ちゃん」にいくらかその雰囲気がある。

で、その「ルーシー」の歌といえば、まっさきに思い浮かぶのがビートルズTHE BETLESの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ」LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS 。
アルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」SGT. PEPPER'S  LONELY HEARTS CLUB BAND の中の1曲。
ルーシーはジョン・レノンJOHN LENNO の息子ジュリアンの友だちで、幼稚園で彼が描いた絵のイメージを楽曲にしたもの。ポップでシュールなのはそのため。曲名の頭文字が「LSD」となることから、ドラッグのこと(トリップして見るイメージ?)をうたっているという人もいるが、はたして。

もう1曲は「ルーシー・ジョーダンのバラッド」THE BALLAD OF LUCY JORDAN。映画「テルマ&ルイーズ」THELMA & LOUISE の挿入曲で、マイフェヴァリットソングでもある。

映画は女性版「ボニー&クライド」という感じのロードムーヴィー。といっても、「ボニー&クライド」ほどワルではない。
レイプ野郎を射殺して警察から追われる身となった友だち同士、テルマとルイーズの遁走劇。ルイーズがスーザン・サランドンSUSAN SARANDON、テルマがジーナ・デーヴィス GEENA DAVIS。はじめはリードするルイーズがカッコいい。で、はじめメソメソしていたテルマがだんだん変わっていくというか自立していく。そこがまたいいんだなぁ。ハイウェイで彼女たちを卑猥にからかったドライバーの石油トレーラーをテルマが拳銃一発で爆破炎上させるシーンは痛快爽快だった。

最後は2人がクルマの中で軽くキス(これがレズビアンというよりも戦友同士という感じ)したあと断崖からダイヴィングしてTHE END。これは大甘。こういうエンディングはずるいし、それまでのクールなストーリーを台無しにしてしまった感が。じゃ、どんな最後がいいんだ? っていわれると困るけど、メキシコへ逃亡し以後消息不明のほうがまだまし。まぁラストいまいちでも良い映画はある。たとえば邦画で言えば浦山桐郎「私が棄てた女」とか。

軌道修正。
この映画にはホンキートンクの場面でカントリーが流れたり、ブルースが聞こえてきたりと音楽もごきげんだったが、なかでもわが頭の中にある“古ぼけた録音機”に残ったのが2人の乗ったクルマが砂漠地帯を遁走するシーンに流れたなんともやりきれない切ない歌。2人の不安と救いを求める心情と妙にマッチして心にジワーッと染みいってきたものだった。
後日、さっそくその1曲が聴きたくてサントラ盤を買いに。

そこで初めてそれが「ルーシー・ジョーダンのバラッド」THE BALLAD OF LUCY JORDANだと知ることに。さらに驚いたのはマリアンヌ・フェイスフルMARIANNE FAITHFULLというクレジット。正直同姓同名かと思った。
あのミック&キースの「涙ながれて」AS TEARS GO BY や「可愛い小鳥」THIS LITTLE BIRD を歌ったマリアンヌとは思えないハスキーヴォイスだったものだから。

しかし、解説を読めばまぎれもなくあのマリアンヌ。
浮き名を流したミックとの破局のあと、スキャンダルに見舞われたり、ドラッグに溺れたりで、そのうち表舞台から姿を消したはずだった。
彼女が復活したのはそれから10年あまり後。この「ルーシー・ジョーダンのバラッド」の入ったアルバム「ブロークン・イングリッシュ」BROKEN ENGLISH によってだったとか。
とにかく、懐かしい人に思わぬ場所で再会したような気分になったものだ。

そんなことがあったので、わたしにとっては忘れられない映画であり、歌となっている。
歌の内容は、平凡な結婚をし子供をもうけた女性が、37歳のある日突然気づく、「なんで今までスポーツカーで街中を乗りまわさなかったのだろう」と。
これは女性の自立のめざめをうたった歌なのだ。さらに言えば、退屈な日常から不倫へ続くドアをあけようという、危険な歌でもある。
この映画のために書かれた歌ではないが、マリアンヌ自身が解説で言っているように「テルマ&ルイーズ」には格好の歌なのだ。

この「ルーシー・ジョーダンのバラッド」、80年代ゴーゴーズGO-GO'sで活躍したベリンダ・カーライルBELINDA CARLISLE も歌っている。彼女も一時ドラッグに溺れ辛酸をなめたのちに復活している。そういう面ではマリアンヌとよく似ている。38歳の時の録音だが声もハスキーで本家を若くした感じ。

ところで「ルーシー・ショー」のルーシーも、「ピーナッツ」のルーシーも本名はルシールLUCILLE 。ルーシー・ジョーダンもそうかもしれない。
「ルーシー」LUCY は単独の名前としてもあるが、「ルシール」や「ルシア」の愛称でもあるのだ。

1957年、R&Bチャートの第1位になったのが「ルシール、帰っておくれ! 俺をひとりにしなでくれ!」と絶叫するリトル・リチャードLITTLE RICHARD の「ルシール」LUCILLE 。2分あまりのロックンロールだが、これがディープ・パープルDEEP PURPLEになると7分以上のロングヴァージョンで聴ける。イアン・ギランIAN GILLAN のヴォーカルは本家に負けないほど“裏返えって”いたり。

「ルシール」は当時、日本では平尾昌章がカヴァーしていたし、その後ジャッキー吉川とブルーコメッツもレパートリーにしていた。

ふたたび「ピーナッツ」の話。
チャーリーに対して「セメントあたま!」と言ったり、スヌーピーに向かって「マヌケ・ビーグル!」と辛辣なルーシーだが、片思いのシュローダーとはなかなか噛み合わない。
「あなたが私に愛していると言ってくれないなら、失神するまで息をとめるわ」という告白も「それは代謝異常の可能性があるからビタミンB6の豊富な牛のレバーを食べればいいよ」とかわされて、「私は愛を求めているのに得られるのは牛のレバーだけ……」といつものようにため息をつく。

毒舌ルーシーが憎めないのは、このため息のせいなのだ。


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Mashi☆Toshi

ルーシー・ショー、大好きでした。
高橋和枝さんの吹き替えがばっちりでしたね。

ところで、ルーシーというと、ビートルズのジョージが、クラプトンから譲り受けたギター、レス・ポールがありました。
その後盗難にあったり、いろいろとドラマがあるギターですが、いまはどうなっているんでしょうね?
by Mashi☆Toshi (2008-11-18 21:31) 

MOMO

Mashi☆Toshiさん、返事が遅れましてすみませんです。

そんな事件がありましたね。

わたしの目の前にもギターがありますが、名前はまだありません。というか、上達しない八つ当たりで名前をつけていません。きっと最後まで名無しで終わるのでしょうね。

Mashi☆Toshiさんのギターにはきっと名前があるのでしょうね。
by MOMO (2008-11-25 21:25) 

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