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[鉛筆] [ozolagnia]

♪ 大学ノートの裏表紙に さなえちゃんを描いたの
  一日中かかって 一生懸命描いたの
  でも鉛筆で描いたから いつのまにか消えたの
  大学ノートの裏表紙の さなえちゃんが消えたの
  もう会えないの もう会えないの
  二度と会えないの
(「さなえちゃん」詞、曲:仲井戸麗市、歌:古井戸、昭和47年)

先日、事務機器の営業部員に拝み倒されて、最新コピー機の展示説明会に拉致されたことがあった。「5分だけ」という約束で会場となっているその事務所へ。最新機器の説明はほとんど馬耳東風だったが、驚いたのはその事務所の内部。20ばかりの机があるのだが、その上にはパソコンと電話しかないのだ。電話で相手の伝言や連絡先をメモするときはどうするのだろうか……。やっぱり筆記用具とメモ帳は必要なのでは、と思った次第。

江戸時代から日本に入ったという鉛筆。英語の鉛筆pencil は綴り発音とも男性器penisと似ているが、それもそのはず語源はどちらもラテン語のpenicillus(小さいシッポ)。

わたしが一番先に手にした筆記用具は鉛筆だった。アスファルトの道路に書きなぐったロウセキや白墨よりも早かったと思う。
鉛筆には匂いがある。それは木の匂いであり、芯の匂いである。木はヒノキ科のインセンスシダー、芯は黒鉛の匂い。それが際立つのは鉛筆を削る時。あの独特の匂いの記憶はいまだ残っている。
削ったのはボンナイフ。金属の取っ手に厚めのカミソリを付けたもので、刃の取り替えが出来た。そのうち手動式の鉛筆削りがあらわれた。裕福な家の子は家庭で使っていた。わたしは相変わらずボンナイフ。そのうち5センチ四方ぐらいの小型鉛筆削りがあらわれた。それは廉価だったので買った記憶がある。しかし、刃が鈍く、削れはするのだが、鉛筆の木の部分がモコモコになってしまった。それで、やっぱりナイフで削るのだが、どうも手先が不器用なのか、一周削ったあとの形や木肌と塗料の模様がきれいでない。それで、さらにもう一周削るのだが、なかなか気に入ったようには削れなかった。友達で上手なやつがいて、そいつの筆箱に収まったキレイに削られた鉛筆は見ていて惚れ惚れするぐらいだった。
使っていたのは六角型のHBか2B。たまに間違えてHなどを買ったら、書き味は薄いし芯はなかなか減らないしで閉口した。薄い鉛筆は芯を濡らすと濃くなるので、鉛筆をなめなめノートに書いた。「芯には鉛が入っているから毒」と言われたものだが、これは誤解。鉛筆は鉛の筆と書くが、芯の原料である黒鉛は鉛ではない。もっとも黒鉛だってからだにいいはずはないのだが。
HとかBはご存知のように芯の硬度(濃さ)で、HはHard、BはBlackの頭文字。Fというのもあり、それはFirm(ひきしまった)からきているとか。赤鉛筆や赤青鉛筆はだいたい丸型。普通の鉛筆でも丸型はあった。なかには三角型も。これは握ってもしっくりこなかった。
中学の頃、友達から鉛筆2ダースをもらったことがあった。三菱製ですべて硬度は「2軟」と書かれていた。これは戦時中、アルファベットを敵性用語としたためで、2Bのこと。
どこに保管されていたのか、製造後20年以上も経ったもので、削るそばから芯がボロボロ折れていった。

古井戸は昭和47年にデビューしたフォークの2人組み。ボーカルの加奈崎芳太郎とギターの仲井戸麗市。7年間の活動ののち解散。仲井戸はごぞんじRCサクセションのギタリストに。「さなえちゃん」は古井戸の最大のヒット曲。鉛筆で描いたのは「さなえちゃん」だけではなく、ケメ君(佐藤公彦?)や加奈崎さん、そして自分も。結局他の人間は消しゴムで消したり、消えたりしたが、自分だけは消えない、という歌。そういえば古井戸にはもう1曲“お絵かき”の歌があった。あるとき机の抽斗の中から(多分)ポスターカラーがでてきて、それで昔つき合っていた彼女の顔を描いたことを思い出すという「ポスターカラー」
ほかに、自分の怠惰な生活を歌った「ろくでなし」、彼女をドライブに誘ったが、どう愛せばいいのかわからなくて焦る若者を歌った「ローリング・ストーンズが鳴っていた」など1970年代の匂いのするいい歌がある。

先日デパートの文具売り場へ行ったとき、鉛筆のコーナーをみつけ、手に取ろうと近づくと、数メートル先からなんとあの鉛筆の匂いがしてきた。あれには驚き、感動した。


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pafu

私は筆圧が強いのか、
Fが好きです。
いまは専らシャープペンシルですが、
鉛筆は、新学期の匂いです。
by pafu (2007-04-14 07:56) 

MOMO

そう、わたしも子供の頃、よく鉛筆の芯を折る方でした。
中学の時スポイト式のペンを貰い、学生服の胸ポケットに差して、少し大人になった気分で悦に入っていました。しかし、ペンにしろシャープペンにしろ昔からどうも馴染みません。よく手に馴染んだペンを持ち、何かの時にスラスラ書く人(少なくなりましたけど)がうらやましい。
新学期の匂いか、なるほど……。
by MOMO (2007-04-14 22:25) 

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