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スティング The Sting [books]



小林信彦氏の「ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200」は氏が選んだ、洋画・邦画各々100作品をピックアップしてあるのですが、それは順位付けをしているわけではなく、年代順に寸評を添えて紹介しているのです。

その89本目1974年の作品(米公開は前年)がジョージ・ロイ・ヒル監督の「スティング」。

主演は「明日に向って撃て」(邦題はあきらかに「俺たちに明日はない」の便乗)からの再コンビのポール・ニューマンとロバート・レッドフォード。

ビリー・ザ・キッドを演じた「左ききの拳銃」から世界チャンプ、ロッキー・グラジアーノがモデルの「傷だらけの栄光」、そして「ハスラー」、「暴力脱獄」、「動く標的」、「引き裂かれたカーテン」と、ポール・ニューマンはわが「反逆のヒーロー」だったので、この映画は封切ロードショー(今はいいませんか)で観に行きました。

前回の「俺たちに明日はない」同様、こちらも大不況に見舞われたアメリカの1930年代が舞台の映画。

スティングとは「騙す」という意味があるようで、まさに詐欺師たちを主人公にしたストーリー。

詐欺といえば日本では高齢者を狙った「オレオレ詐欺」などが社会的犯罪として問題になっていますが、「スティング」の詐欺師たちがターゲットとするのは、暗黒街の極悪ボス、それも詐欺師の仲間を殺した復讐すべき相手。つまり観客は、「騙されて当然の人間」という免罪符のもとに、詐欺師たちに加担するのでした。詐欺師たちにシンパシーを感じ、かれらの芸術的トリックに快哉を叫ぶのです。

といっても、ロイ・ヒル監督が本当のターゲットにしたのは、もちろん「観客」なのです。観客たちは2時間あまりの話の中で、何度もその罠にはまり、「そうだったのか」「なんだ、そういうことか」「やられた」を連発するのでした。

わたしが最も「やられた」と思ったのは、このとてつもないトリックのキッカケをつくり、殺し屋に狙われているロバート・レッドフォード扮する若手詐欺師が、ナンパしてひと夜をともにしたレストランのレジ係の正体とその結末。

とにかく、痛快で後味スッキリの名作です。
やっぱりポール・ニューマンが良かった。「暴力脱獄」のあの“ガッツ”や、野心に燃えるかのハスラーが年を経て、シブ味のきいた粋な大人になったんだ、などと思わせてくれました。

さて、その主題歌はスコット・ジョプリンscotte joplinが奏でる「ジ・エンターテイナー」the entertainerや「メイプルリーフ・ラグ」maple leaf rag などのラグタイムピアノ。

もはや記憶が散逸する歳なので、正確には覚えていませんが、当時スコット・ジョプリンのアルバムを購入したのですが、それが「スティング」を見てからなのか、その前なのかはっきりしません。たしか、友人の家でスコット・ジョプリンのレコードを聴いて、「買おう」と思ったことは間違いなく、ただそれが、映画を観た後だったのか、前だったのか。

いずれにしても、当時デューク・エリントンやテディ・ウィルソン、レイ・ブライアントなどのジャズピアノが好きで聴いていたのですが、スコット・ジョプリンは、そういうものに比べてその旋律や音色がのどかで、なんともgood old days 感がたまりませんでした。

このラグタイムピアノも、前回の「俺たちに明日はない」の「フォギー・マウンテン・ブレイクダウン」同様、映画によって再認識、再評価された音楽であり、楽曲でした。

それが現在、なぜかJリーグや高校野球の応援歌としてしばしば耳にします。とりわけJリーグではスキャットで。
多分サポーターや高校野球の応援団、ファンは、元の曲など知らないで歌い、演奏しているのでしょうね。でも、いつ誰がこの曲を応援歌にしょうと目をつけたのでしょうか。いずれにしろ歌や楽曲が生き残っていくということでは、意味のあるこのなのでしょう。

そういえばこの「ジ・エンターテイナー」つい最近、TVCMで耳にしたような記憶があるのですが、空耳でしょうか。なにせ記憶が散逸してしまっておりますので。

とにかく、小林信彦氏も「ぼくも騙された」とその騙しのトリックを絶賛していた「スティング」はラグタイムピアノを聴きながら、いつかまた観たい映画でもあります。

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