三つの歌●演歌・女篇 [day by day]
やっぱりダメだったか。
逸ノ城の新入幕優勝ならず。
「大相撲を嘗めんなよ」
と相撲の神さんがいっているようで。
それにしても、さすが白鵬。
インタビューの端々に「ちょっと待ってくれよ、どれだけの超新星か知らないけど、オレと対等な扱いは失礼じゃないか。まだまだ……」というような自信がのぞいておりました。
しかし、逸ノ城がとてつもない素質を秘めた力士であることに異を唱える相撲ファンはいないでしょう。
あの強面が、相撲に勝って花道を下がるときに付き人に対してみせる笑顔が、なんとも純で好青年。
できることなら、あのまま髷を結わずにザンバラをトレードマークにしてもらいたい。無理だけど。
とにかくどれだけ早く横綱になれるか楽しみ。
では本題に。
今回は前回に続いて演歌。今度は女性歌手で。
3曲というか、3人を選ぶのがひとくろう。
年功序列でいけば、大月みやこだとか二宮ゆき子だとか三沢はるみもいますが、フェヴァリットで選べば、八代亜紀、ちあきなおみ、そして都はるみの3人でしょうか。
“四つの歌”ということなら藤圭子を加えたいのですが、いずれまたということで。
まずは都はるみ。
ヒット曲の多いこと。あたりまえだけど。
でも、石川さゆりもそうだけど、ベテランになるにつれて、人生だとか、文芸作品風だとか“大袈裟”な歌が多くなるのがカナシイ。やっぱり男と女の恋物語でいいんじゃないでしょうか、流行歌は。
ですから、はるみ節もサブちゃん同様初期の歌がいい。
「レモン月夜の散歩道」なんていいなぁ、と思ったのですが、YOU-TUBEで探したら全部シロウトさんのカヴァー。
たしかに上手な人もいるけど、やっぱりカンベンしてもらいたいんすョ。
それで“第二希望”の「さよなら列車」。
昭和20年代後半から30年代にかけての歌謡曲黄金時代を髣髴とさせる昭和41年のヒット曲。
そうそう、あの頃は日本各地を列車が走り回っておりました。
当時列車といえば煙モクモクの蒸気機関車のこと。ディーゼルもあったけど、そんじゃ絵にならない。
岡本敦郎の「高原列車は行く」、春日八郎の「赤いランプの終列車」、そして三橋美智也の「哀愁列車」と恋に、別れに似合うんだな列車が、また。
作曲は師匠の市川昭介。
作詞はゴジラ映画の脚本家でもあった関沢新一。
関沢さんは元祖「鉄ちゃん」で、後年は鉄道カメラマンとして、また蒸気機関車の専門誌の編集長として異彩を放っていたとか。
作詞家としてヒット曲も多く、いくつかあげてみますと「ダイナマイトが150トン」、「皆の衆」、「柔」、「学園広場」「泣いてたまるか」など(歌手省略)。
都はるみではほかに、「涙の連絡船」や「アラ見てたのね」が。
2人目はちあきなおみ。
もう完全引退なのでしょうね。
ナオミ・キャンベルじゃなくてなおみカムバックは、もはやナオミの夢のようで。
わけのわからないことを言ってないで、歌を。
「黄昏のビギン」や「夕笛」なんかのカヴァーも捨てがたいのですが、やっぱりオリジナルで。
ちあきなおみ=演歌でいいのでしょうが、なんとなくポップスの香りがしますね。
昭和44年のデビュー曲「雨に濡れた慕情」はそうでもないけど、そのあとの「四つのお願い」や「X+Y=LOVE」なんかそういう感じ。
で、選んだのは「喝采」でレコード大賞を獲った翌年、昭和48にリリースした「夜間飛行」。作詞・吉田旺、作曲・中村泰士の「喝采コンビ」。
中村泰士の曲って「心のこり」(細川たかし)もそうだけど、どこかバタくさい。元ロカビリアンだからでしょうか。
この歌もサビのあたりからそんな感じです。
夜の飛行機で恋人とから遠ざかっていくという設定も当時としては新鮮でした。
さいごは八代亜紀。
この人もヒット曲数多あるけれど、ピカイチといえばやっぱり「舟唄」。定番だね。
♪お酒はぬるめの燗がいい 肴はあぶった烏賊がいい
これ一番。
♪店には飾りがないがいい 窓から港が見えりゃいい
これが二番。
「飾りがないがいい」って日本語ではない。
飾りがない方がいい、とか、飾りがないのがいいっていう意味で、旋律に合わせるのならば「飾りがなくていい」でしょうが、流行歌に文法は必要ない。
作詞の阿久悠はわざと「の」を省いて「ひっかかり」をつくっているのですね。
これは阿久悠独自のテクニックではなく、流行歌詞ではしばしばつかわれる手法。
たとえば昭和13年に世に出た曲で、戦後村田英雄にカヴァーされた「人生劇場」(作詞・佐藤惣之助)でも、
♪やると思えば どこまでやるさ
と「どこまでも」の「も」を省略している。
でも、流通してしまえばコッチのもの。誰もが「どこまでやるさ」と口ずさむのだから。
流行歌ってそういうラフなところがいいんですよね。
そうです、舟唄でした。
もうこの名曲についてあれこれいう必要はないでしょうが、ひとつだけつけ加えておくならば、この歌をさらに名曲たらしめたのが、映画「駅 ステーション」(監督・降旗康男、脚本・倉本聰、出演・高倉健、倍賞千恵子ほか)だったということ。
残念ながらYOU-TUBEは、かのシーンではありませんでしたが、大晦日の夜、倍賞千恵子の営む一杯飲み屋で高倉健の胸に背中を預けながら、二人だけでテレビの紅白を見るというシーン。
テレビではまさに八代亜紀が「舟唄」をうたいはじめるところ。
名シーンでしたね。日本映画史上に残るラブシーンでしたね。
さくらさん、じゃなくて倍賞さん、健さんが刑事だって知らないんだよね。
ラストがまた切ないんだ。未見の人のためにいわないけど。
最後にふたたび大相撲の話。
栃ノ心もやりました。15戦全勝の十両優勝は把瑠都以来だそうです。来場所は幕内復帰なるのかな。
あとは今場所気力体力とも最低だった服部に頑張ってもらって、今場所2ケタ勝利で、来場所初の三役入りが期待される長身・勢とともにまずは大関を獲ってほしい。
勢は相撲甚句の名人のようで、先日テレビ東京の歌番組に出て、懇意にしている山本譲二の「みちのくひとり旅」と琴風の「まわり道」をうたってました。
琴風ほどじゃなかったけど、上手でしたね。
でも、歌のうまいお相撲さんて、せいぜい大関どまりなんだよなぁ。増位山にしろ琴風にしろ。
服部くん、くれぐれもレコーディングなんてしないでね。
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