●ロシアンソング② [noisy life]
忘れないうちにロシアンソングの第二弾を。
CMで見たというか聴いたかの[Those were the days]、日本のタイトルでは「悲しき天使」。
カチューシャに続いてまた疑問ですが、なんで「悲しき天使」なのでしょうか。
原題からひねり出せば「あの日あの頃」とか「友といたころ」でもいいと思うのですけど、やっぱりポップじゃないかも。
「悲しき」は当時の和製ポップスの常套句。
悲しき17才に悲しき60才。悲しき街角には悲しき足音があり、やがて悲しき雨音も聞こえて。悲しき片思いは悲しき願いだし、悲しき少年兵がいれば悲しきインディアンもいて、果ては悲しきカンガルーまでも。もういいか。
とにかく1967年にメリー・ホプキンによって世界的ビッグヒットとなった名曲ですね。
どれだけのミュージシャンがカヴァーしたかという、その数の多さが名曲のひとつのバロメーターになるわけでして、そういう意味でもこの「悲しき天使」のカヴァーは多い。
驚いたのは、以前紹介しましたがカントリーのドリー・パートンまで歌っていたこと。
ビング・クロスビーやエンゲルベルト・フィンパーティンクも歌っているし、ポール・モーリアやフランク・プールセルのオーケストラもいいです。
日本人のカヴァーも多く、当時は広川あけみや森山良子がよく聴こえていた。
時代がGSブームともかぶったこともあって、スイング・ウエストがカヴァーしていました。のちには南沙織もアルバムに入れていたしね。
でも、個人的には小川知子。ファンだったこともあって、よく聴いていました。残念ながらYOU-TUBEにはありませんでしたが。
当時はまったくの英国のジーン・ラスキンのオリジナルだと思われていたのが、その後元歌はロシア民謡だといわれるようになり、またしばらくして、民謡ではなく20世紀初頭にロシアでつくられた流行歌だとして決着。
いずれにしてもロシアンソングであることには変わりなく、曲調に「黒い瞳」や前回ピックアップした「少女ナディア」同様、ロマの香りがただよっています。
上にあげたどのヴァージョンも好きなのですが、今回は(も)賑々しくユーロビートの「悲しき天使」を。
「悲しき」がかつてカヴァーポップスを含めた日本の流行歌のタイトルのキイワードだったことは前述しましたが、その片割れの「天使」のほうも当時よく使われました。
「悲しき天使」と同じ昭和40年代でいうと、
数年前再ヒットした「天使のスキャット」(由紀さおり)がそうですし、「天使の誘惑」(黛ジュン)、天使になれない(和田アキ子)、さすらいの天使(いしだあゆみ)、渚の天使(弘田三枝子)などが。
天使のトレンドは50年代になっても続き、松田聖子に「天使のウインク」、「私だけの天使」がありますし、桜田淳子には「天使も夢見る」、「天使の初恋」が。
そしてロシアンソング2曲め。
「悲しき天使」がヒットした翌年、日本でヒットしたのがダニエル・ビダルのうたったフレンチポップス「天使のらくがき」。
彼女のデビュー曲で原題は「あなたの好きなもののように」。
どこが天使やねん、のツッコミが聞こえそうですが、しいていうならダニエル・ビダルが天使だったんじゃないですか。
この「天使のらくがき」もロシアンソング。戦後つくられたロシアンポップスで、原題は「隣人」だとか。
ロシア民謡を中心にロシアンソングを日本に広めた功労者の“ひとり”であり、逆輸入となるロシア公演の数も多かったダークダックスも「隣の恋人」というタイトルでうたっています。
今回はロシアのシンガーで本場の“天使のらくがき”を。
相変わらずのダラダラぶりで長くなっておりますので、さっさと最後の曲へ。
「悲しき天使」、「天使のらくがき」ときたのだから、最後の曲も「天使」で締めたかったのですが、そうはいかないところが苦しい。
でも、それは美しい娘さんの歌で、男にとってはある意味「天使」。
昭和36年に和製アンドリュー・シスターズといわれた(かな)スリー・グレイセスがヒットさせた「山のロザリア」。
日本でいちばんはじめにうたったのは織井茂子で「牧場のロザリア」というタイトルで。またスリー・グレイセスのあとに井上ひろしもカヴァーしています。
もちろん、ロシアンソングには欠かせないダーク・ダックスやボニー・ジャックスなど、いろいろなシンガーがレコーディングしています。
そうなんです、この曲もロシアンソングなのです。ただ、いつごろ作られたのかは不明。原曲はアレクサンドロフスキという舞踏曲だそうですが、作者も不明なのでフォークソングといってもいいのかもしれません。
YOU-TUBEで原曲を探してみましたが、なかなかなくて、ワルツでなんとなく雰囲気がにているな、と思ったのがこの曲。
どうでしょうか、違うかな。
日本の「山のロザリア」とはだいぶ違いますね。「山のロザリア」はやっぱり歌謡曲のアレンジです。なかなかですよね。
ちなみにアレンジャーは小杉仁三で、どうやらクラウンレコードの専属だったようで、「星のフラメンコ」をはじめ西郷輝彦の一連のヒット曲や、小林旭の「恋の山手線」、渡哲也の「東京流れ者」、水前寺清子の「三百六十五歩のマーチ」などを手掛けています。
もうひとつ付け加えれば、作詞は亡くなりましたが、「東京のバスガール」や「高校三年生」の丘灯至夫。
なんとなく、画竜点睛に欠けるような気分なので、次回極めつけのロシアンソングをいま一度。
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