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その名は●デコちゃん [the name]

浮雲①1955.jpg

あの娘可愛いや カンカン娘
 赤いブラウス サンダルはいて
 誰を待つやら 銀座の街角
 時計ながめて そわそわ にやにや
 これが銀座の カンカン娘
 (これが銀座の カンカン娘)
(「銀座カンカン娘」詞:佐伯孝夫、曲:服部良一、歌:高峰秀子、昭和24年)

デコ。

子どものあだ名です。

男の子だとだいたい、おでこが出っ張ってる子に対してつかわれてました。
多くは「デコ坊」、なんて。
「デコ」って呼び捨てにする場合も。それでも「デコ」はまだましで、乱暴になると「デコ助」なんて。さらにいい加減になると「デコっ八(ぱち)」なんて、意味のない「八」をつけられちゃったり。

その点、女の娘の「デコ」は可愛い。
ほとんどの場合、「ひでこ」の「ひ」がノドに吸い込まれて「でこ」になる。
それも、だいたいはちゃんがちゃんとついて「デコちゃん」になる。

男の子の「デコっ八」が、「デコちゃん」なんて呼ばれることはあまりない。子供のころから、男に対しては世間の風は冷たいと相場が決まっている。
そんな男はうっちゃといて、「デコちゃん」を。

「デコちゃん」といえば、誰が何と言っても高峰秀子
誰も何とも言わないし、若い人にとっては「それ誰?」なのかも。

高峰秀子が亡くなったのが、ちょうど去年の昨日、12月28日。
昨日アップすればグッドタイミングだったんですけど、そのへんがしまりがないというか。

訃報はたしか、年があけてから発表されたんじゃなかったかな。勘違いかな。とにかく亡くなって1年が経ちました。

晩年はエッセイストとして健筆ぶりを披露してくれましたが、やはりわたしにとってもファンにとっても、高峰秀子は稀有な女優。

5歳で映画デビュー。子役は大成しないという言い伝えを覆し、みごとにトップ女優に。
55歳で、まるでサラリーマンが停年退職するように女優を引退。
すごいよね、50年間映画界で、それも第一線ではたらいたんだから。大卒のサラリーマンだったら70歳を優にこえてしまう。

高峰三枝子、山口淑子、山田五十鈴、原節子などなど往年の大女優数々あれど、わたしのなかではピカイチ。

なんて偉そうなことをいってますが、わたしが観た彼女の映画はほとんど“後追い”つまりリアルタイムでは観ていないので……。

それでも好きなのはやっぱり学生時代に観た「成瀬巳喜男作品」。
ダントツが森雅之と演じた「浮雲」。同じ林芙美子の「放浪記」もよかった。ダメ作家の宝田明が妙にリアルで。

女給に扮した「女が階段を上がるとき」もよかったし、義弟・加山雄三とのなさぬ恋がせつなかった「乱れる」などなど。

木下惠介作品ならストリッパーに扮した「カルメン故郷に帰る」からはじまって、「女の園」、「二十四の瞳」、佐田啓二と共演した「喜びも悲しみも幾歳月」や「永遠の人」などなど。

百作品百様といっていいほどの、カメレオンぶりはまさにプロ中のプロの女優。

わたしのような当時の若造をも魅了してしまうその容姿と雰囲気は、彼女より年配の文化人や芸能人、たとえば谷崎潤一郎、梅原龍三郎、東海林太郎らをも熱烈なファンにしてしまうという魔性ぶり。まさに「ジジゴロシ」。ブロマイド売上第一位になったこともあったのではないでしょうか。

でもなんとなくわかるな。
決して美人ではないけれど、どこか対面する相手に安心感を与えるというか、菩薩のような優しさを漂わせているというのか。包容力、いや抱擁力っていうんでしょうか。
よくいう「男好きのする」顔なり、雰囲気でしたね。

で、彼女はもちろん親しい人からもファンからも「デコちゃん」って呼ばれていたのですが、そのデコちゃんの歌を。

高峰秀子の歌唱はそこそこ上手(名女優だもの、歌手役だってこなすさ)でしたが、同性の三枝子さんほどレコーディングはしていませんし、ヒット曲もない。
そんなにうたうことが好きではなかったのかも。

最大のヒット曲といえば、やはり「銀座カンカン娘」
同名映画の主題歌で、作詞作曲は上にあるように佐伯孝夫服部良一
とりわけ曲がいいですね。昭和24年、まだ焼跡の匂いが残る(なことはない)時代に轟いたハッピーソング。

当時の進駐軍のにキャンプで、ペギー葉山がその「銀座カンカン娘」をうたうと「オー! キャン・キャン・ガール」と歓声があがって大ウケだったとか。

作詞はヒットメーカー・佐伯孝夫ですが、服部良一の自伝によると競作というか、ほとんど服部さんの意向が反映されているようで。

それとやはりヒット映画の主題歌「カルメン故郷に帰る」
こちらは作詞が木下映画に欠かせない木下忠司、作曲は映画で音楽を担当した黛敏郎

ほかで音源が残っているのは戦前の「森の水車」「煙草屋の娘」
どちらも清水みのる米山正夫の作詞・作曲。「煙草屋の娘」は外国曲のカヴァーという説明も。「森の水車」は戦後、並木路子が再ヒットさせたよく知られた曲。

そのほかこんな劇中歌も。
そして戦前からよく共演した灰田勝彦とこんなシーン。

もう出ないだろうなぁ、ああいう女優。また、そういう時代だったんでしょうね。
映画の世界が華やかで、女優がとてつもなく輝いていた時代。

タソガレそうなので、気をとりなおして、そのほかのデコちゃんを。

まずはやはり女優の吉田日出子

はじめて観たのは大島渚の「日本春歌考」。
映画はたいして面白くありませんでしたが、デコちゃんだけが輝いて見えました。たしか宮本信子も出ていた記憶が。
劇中で、「満鉄小唄」をうたうんです。それがなんともしばらく耳について。

残念ながらレコーディンがはしていないようで、歌詞は朝鮮人従軍慰安婦のつぶやきというかたちですが、はたして彼女たちの実声を採録したのものか、日本人がおもしろおかしく作ったのかは不明。曲借り物で、本歌は藤原義江がつくりうたった軍歌「討匪行」

その後、テレビドラマでブレイクしますが、元々は舞台女優。
ところで、「日本春歌考」が昭和42年ですが、その前年にテレビの脇役で出ていることを最近YOU-TUBEで知りました。
渥美清とは「男はつらいよ」でもマドンナ役で出ていましたね、何作目だったでしょうか。

高峰秀子にどこか通ずる、ゆるやかというのかたおやかというのか、好きな顔であり、雰囲気です。

で、彼女の最大のヒット作といえば舞台も、映画も、歌も「上海バンスキング」に尽きます。舞台も見ていなし、映画も見ていない。それでもなぜかLPだけは買っておりまして。

そのレコードでは「月光値千金」から「サイド・バイ・サイド」「ダイナ」「素敵な貴方」「スィング・スィング・スィング」「明るい表通り」と、戦前のスインギーなジャズソングが目白押し。

そんなかなで好きなのがかつてディック・ミネがうたいヒットさせた「リンゴの樹の下で」

さすが女優さん、上手下手を超越した味のある雰囲気十分の歌唱で、わたしにとって未生だった戦前へ連れて行ってくれます。

例によって予定オーバー。
2人じゃさみしいので、最後にもうひとりデコちゃんを。

機会があればまたということで、今回は歌だけを。
日本人のファド・シンガー、月田秀子
10年ほど前に知合いからCDをもらいました。

ファドといえばアマリア・ロドリゲスに代表される「暗いはしけ」
もひとつ、CDには入っていませんでしたが、ギリシアの歌だという「汽車は八時に出る」

ところで、いま(正月は休みかな)、東京国立近代美術館で高峰秀子の展示会をやっているようです。最寄駅は東西線木場駅(ちょっと歩くけど木場公園を通るので散歩にいい)。興味のある方はどうぞ。

今年のブログもこれが打ち納め。
なんだか、もろもろもの足りない一年ではありました。
来年はも少しいいことが起こることを期待しつつ、みなさまお元気で、よいお年をお迎えください。


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