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秋の歌②青い月 [noisy life]

青い月夜.jpg

♪霧にまかれた あなたの窓辺
 ともる灯が とてもいとしい
 長いドレスを 愛してくれた
 やさしいあなたは 空のはて
 
 青い青い月夜の くちづけを
 残してあなたは ひとりで眠る
 瞳をとじて 心をとじて
(「青い月夜」詞:橋本淳、曲:井上忠夫、歌:奥村チヨ、昭和43年)

鎖(じょう)明けて 月さし入れよ 浮御堂  芭蕉

秋の代表的な季語といえば月。

もう過ぎてしまいましたが仲秋の名月といわれるほど、空気が澄み切った秋の月がもっとも美しいといわれています。

春は花見で、秋は月見。
和室の花瓶にススキが活けてあり、その脇の三方には団子がいくつも乗っている。そして縁側から見える彼方の夜空には満月が……、なんて絵柄を以前はよく見かけましたが、いまはどうなんでしょう。
というか、花見はあっても月見なんて一度もしたことないって人が多いのでは。そういうわたしも。

その月はまた歌の世界では欠かせない小道具(大道具かな)。
ただ、「月」だけでは漠然として広がりすぎるので、今回は色味のついた月にしてみました。

歌の世界で多いと思われる月の色は青。

なんでですかね。正直青い月なんて一度も見たことないけど。
ただ、実際に稀ではありますが、月が青く見えることがあるとか。なんでも大気中のチリの影響とかで。そういえば空の青もそうでした。

にもかかわらず「青い月」がうたわれるのは、「青」そのものが失意や憂鬱、あるいは淋しさ、悲しみなど、いささかネガティヴなイメージをもつ色で、そうした感情がよくうたわれる流行歌にはもってこいだからなんじゃないでしょうか。

江戸時代、あるいは明治大正の頃から月が青かったかどうかは知りませんが、昭和、それも戦前から月は青かった。

♪ガーデンブリッジ 誰と見る青い月 「上海ブルース」ディック・ミネ

昭和13年のヒット曲です。
何にもいわずに別れた二人。あの人は今何処。という未練節。

そして戦後、もっとも人びとが口ずさんだのが、昭和30年の、
♪月がとっても青いから 遠回りして帰ろう 「月がとっても青いから」菅原都々子

なんで月が青いと遠回りしたくなるのか、よくわかりませんが、子供ながらにわたしも大人のマネをして口ずさんでおりました。

作曲の陸奥明は戦前からの人で、ヒット曲には三波春夫の“長谷川伸もの”「雪の渡り鳥」和田弘とマヒナスターズ「お座敷小唄」があります。

ほかに「憧れのハワイ航路」を彷彿させる春日八郎「青い月夜だ」や、大津美子「青い月夜の並木路」など、いかにも歌謡曲らしい歌もありましたが、昭和30年代も後半になり、カヴァーポップス全盛期になるとどっと「青い月」が登場します。

♪青い月の光を浴びながら 私は砂の中に 「砂に消えた涙」(ザ・ピーナッツ)
♪ティンタレーダディルンナ 青いお月さま 「月影のナポリ」(森山加代子)
♪青い月や 星空さえ なぜか胸を せつなくする 「すてきな16才」(弘田三枝子)
♪響く陽気なサンブンバ 青い月の光浴び 「月影のキューバ」(ザ・ピーナッツ)

こうなるともう「青い月」はトレンド。
ちなみに訳詞(作詞かも)は、上から漣健児、岩谷時子、漣健児、音羽たかし

やがて“ガールポップス”の隆盛も終わり、日本のポップスはグループサウンズの時代へ。
そんななかでも純和製ガールポップスのヒット曲は生まれ、それらはのちに“ひとりGS”(誰がつけたかダサイ呼び名、ガールが抜けてるし)などと呼ばれます。

そんななかでうたわれた「青い月」が奥村チヨ「青い月夜」

奥村チヨは元々隠れたCMソングの女王でしたが、昭和40年に「ごめんね、ジロー」が初ヒット。42年にはベンチャーズ「北国の青い空」をヒットさせ、その翌年がこの「青い月夜」。

作詞・作曲は上にあるように橋本淳井上忠夫
「ブルーシャトー」のコンビで、ブルーコメッツのヒット曲の大半はこのコンビによってつくられています。ブルーシャトーもそうですが、ほかにも「青い瞳」、「青い渚」の“ブルーソング”が。

その後もポツンポツンと「青い月」はうたわれているようですが、もう1曲取り上げてみたいのが、吉屋潤のつくった「離別(イ・ビョル)」
♪青い月を見上げ ひとり過ごす夜は
初めて聴いた李成愛か、吉屋の元妻、パティ・キムで聴きたかったのですが、どちらもYOU-TUBEにはなし。

とりわけパティ・キム版は、以前NHKの何かの番組で見ましたが、まさにリアルな実生活とファンタジーが交差して、ドキュメンタリーの迫力がありました。

やっぱり「青い月」には悲恋や別離が合うようで。

最後にとってつけたように洋楽の「青い月」を1曲。

ポピュラーなのはエラ・フィッツジェラルドメル・トーメなどでおなじみのスタンダードの「ブルームーン」Blue Moonか、ビル・モンローのブルーグラスをポップスにアレンジしたエルヴィス「ケンタッキーの青い月」Blue Moon of Kentucky ですが、ここではカントリーの「ブルームーンがまた輝けば」When My Blue Moon Turns to Gold Again を。

青い月にお目にかかれば、別れた彼女もまた帰ってくる。
というフラれ男の楽観ソング。

でも、アメリカでも「青い月」はなかなか見られないらしく、[BLUE MOON] イコール「めったに起こりえないこと」という意味があるらしい。
つまり、彼女が復帰する確率は限りなくゼロに近いというわけ。

エルヴィスもたっていますが、今回は作者でもあるウィリー・ウォオーカージーン・サリヴァンWILLIE WALKER & GENE SULLIVAN のオリジナルで。と思っていたらいきなりシャットアウト。

ならばポップなスタットラー・ブラザーズStatler Brothersで。

でも一度見てみたいなぁ、青い月とやらを死ぬまでに。


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