三つの歌●エルヴィス・プレスリー② [day by day]
You know I can be found,
sitting home all alone,
If you can't come around,
at least please telephone.
Don't be cruel to a heart that's true.
Baby, if I made you mad
for something I might have said,
Please, let's forget the past,
the future looks bright ahead,
Don't be cruel to a heart that's true.
I don't want no other love,
Baby it's just you I'm thinking of.
([DON’T BE CRUEL] written by OTIS BLACKWELL,1956)
前々回の「エルビス・プレスリー①」で、内田裕也が「悲しき悪魔」をカヴァーしたといいましたが、今回はエルヴィスのpart2として、日本人のカヴァーを。
もちろん厳選3曲。三つの歌ですから。
エルヴィスのカヴァーといえば、その第一号が小坂一也で、曲は彼をいちやく有名にした「ハートブレイク・ホテル」。昭和31年のこと。
♪恋に破れた若者たちで いつも混んでるハートブレイク・ホテル
という有名な訳詞は、彼の師匠でもある服部レイモンド。
ほかでは、「監獄ロック」、「ラヴ・ミー・テンダー」、「冷たくしないで」をカヴァーしています。いずれも日本語をまじえて。
「ハートブレイク・ホテル」と「監獄ロック」は平尾昌章もカヴァーしているし、「ラヴ・ミー・テンダー」はミッキー・カーチスが。
また、ミッキーはほかに「ブルー・スウェード・シューズ」と「フール・サッチ・アズ・アイ」も。
平尾、ミッキーとくれば、近年亡くなった山下敬二郎は「アイ・ニード・ユー・ラヴ・トゥナイト」。
そのほかでは、容姿が似ている? ところから和製プレスリーなどといわれたのが佐々木功とほりまさゆき。
佐々木は「GIブルース」、ほりまさゆきは「ロカ・フラ・ベイビー」などを。
「GIブルース」のカヴァーでナンバーワンだったのは坂本九で、かまやつひろしもレコーディングしている。
またエルヴィスのカヴァーは男性シンガーとは限らない。
女性陣では、浜村美智子が「監獄ロック」を、雪村いづみが「ラヴ・ミー・テンダー」をそれぞれカヴァーしている。
おもしろいのは「グッド・ラック・チャーム」。
男では聴いたことがない(でもいるかもしれない)が、女性ではザ・ピーナッツと梅木マリが競作している。
わたしの持っている音源だけでも以上のとおり。
おそらくその数倍はカヴァーされているのではないでしょうか。
それではメイン・イベントに。
① ハートブレイク・ホテル 宇崎竜童
エルヴィスがデビューし、日本に上陸した頃、宇崎竜童はおそらく中学生か高校生。もっとも“吸収力”のある頃で、影響を受けたことは大いに想像できる。
歌唱はお世辞にもうまいとは思いませんが、ボディアクションを含めたパフォーマンスというかノリが、いかにもエルヴィスフリークって感じがします。
ほかにもメドレーで「監獄ロック」、「ブルー・スウェード・シューズ」、「ハウンド・ドッグ」など数曲をうたっているYOU-TUBEがあるので、聴いてみたい方は探してみてください。
② 好きにならずにいられない 桑田佳祐
1961年の映画「ブルー・ハワイ」の挿入歌。
全米2位のヒット曲。日本では70年代に入って再ブレイクしてからヒットしたような印象があるのですが。
フランスのクラシック「愛のよろこび」(ジャン・ポール・マルティーニ)が本歌で、ナナ・ムスクーリもうたっている。
それにしても桑田佳祐、うまいね。彼のスタンダード・ジャズも聴いたことがあるけど、びっくりするほどうまかった。さほど個性をださずサラッとうたっているのにね。
③ 冷たくしないで 矢沢永吉
1997年、エルヴィスの没後20年を記念してロンドンのウェンブリーで行われたロックコンサート「SONGS & VISIONS」(トリビュートではありません)にアジア代表として参加したときのもの。
1997年から[HARTBERAK HOTEL]の1956年まで、ヒット曲で遡るというコンサート。ボンジョビやロッド・スチュアートも出ていました。
この模様は矢沢を中心にリハーサルを含めてNHKがドキュメントしていました。
見た人もいると思いますが、リハーサルでワイヤレスマイクの調子がおかしく「なんで俺のだけ?」って永ちゃんが苛立っていたのがおもしろかった。
そして歌い終わり袖に引っ込んできたとき「勝ったな!」とひとこと言い放ったのが印象的でした。
「勝ち負け」、それほど矢沢永吉のなかでプレッシャーと「本場がなんぼのもんじゃい」という気負いがあったのだなと感じた次第。
ところで歌は。
これがYOU-TUBEをごらんになればわかるとおり、最高。
コアなファンではないので、永ちゃんのカヴァーなんて聴くのが初めて(数年前だったが「砂に消えた涙」をやってましたね)。それもエルヴィスとは。
よっぽど練習したのか、以前からうたいこんでいたのか。
とにかくロッドなんかよりはるかにイカしてました。
またパフォーマンスも本場だからと媚びずに日本でやるように。
それがイギリス人にどう映ったかはわかりませんが、心意気やよし。
あれをきっかけに世界進出とはなりませんでしたが、YAZAWAの力量が世界に通ずるものだということが証明されました。
いまとなっては、ボンジョビやロッドが何をうたったのかほとんど忘れています。覚えているのは永ちゃんのこの歌と、好きなk.d.ラングの[I WILL SURVIVE](オマケです。これがまたカッコよかったんだ)だけ。
ウェンブリーのコンサートの模様は永ちゃんの著書「アー・ユー・ハッピー?」の文庫版に少しだけ書いてあります。
ただ、残念ながらなぜ[DON’T BE CRUEL]を選曲したのか(主催者のリクエストかも、そうだとしたら、あれほどのパフォーマンスはそれはそれでスゴイ)、そして永ちゃんとエルヴィスの接点は「いつどこで」という疑問への回答は書いてありませんでした。
とにかくいままで見た日本人のエルヴィスのカヴァーの中では、何度もいうけど最高。
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