異論な人01 雪駄とニュースペーパー [people]
わたしはよく電車に乗ります。
だからといってよくいう「鉄ちゃん」ではありませんが。
JR、私鉄なんでも乗りますが、できたら外の景色の見える鉄道がいい。
最近すきなのは、総武線、常磐線、京成線、そして東武伊勢崎線。
と並べれば、察しのつくひとがいるかもしれませんが、すべてスカイツリーの見える路線なのです。ほかにもありますが。
ところで、見知らぬ同士が狭い空間に同乗するという電車中では、ほんとに様々なことが起こりますし、まさにいろんな人がいます。
つい先日、京浜東北線(この車窓からもスカイツリーが見えます)で西川口方面(昼間ですから)へ行ったときのこと。
田端駅から電車に乗り込むと、目の前の四人掛けのシートに3人が座っていました。
ドア側にわたしよりちょい年上の大柄な紳士(ネクタイしてましたので)。奥側に女性がふたり。
わたしはその紳士と女性の間に座らせてもらうことに。
女性は眠っているようでしたので、その紳士に会釈して腰をおろしました。
ところがその紳士の足がいささか、いやかなりワイドになっておりまして、わたしは膝を合わせ、なおかつ隣の女性の足にくっつかんばかりの状態に。
目的駅までは10数分ありますので、ちょっとキツイなと思ったので、その紳士に
「すみません、あの、もうちょっと……」
と遠慮がちにいったところ、いい終らないうちに察したのか、
「こっちはいっぱいだよ、隣につめてもらえよ」
とご立腹の様子。
どうやらワイドになってる足幅には気づいていないようなので、
「いえ、そうではなくて、その足をもう少し狭めていただけませんか……」
というと、その紳士
「なに言ってんだ、そんなに広げちゃいなだろ」
と語気を荒げながら、20センチばかり徐々に足幅を狭めてくれました。
わたしは、目的を達成したので、バッグから本を取り出しページをめくりはじめました。笑いを噛み殺しながら(わたしも悪い人間だ)。
その紳士はそのあとふた駅目でおりてしまったのですが、その後もちょっとした出来事が。
ドアの傍に立っていた男子高校生が急にしゃがみこんでしまいました。
電車中でしゃがんでいる若者はめずらしくないので、わたしは気にもしませんでしたが、よく見ている人はいるもので、わたしの向かいに座っていた40代とおぼしき婦人が、
「ここに座りなさい」
と声をかけて立ち上がりました。
高校生は頭をさげて座席にすわり、うなだれてぐったりした様子。熱中症か貧血か。
すると彼の横に座っていた、幼児をかかえた若い女性がバッグからジュースのペットボトルを取り出し、彼に差し出しました。
彼はふたたび頭をさげて、ペットボトルの蓋をあけ、勢いよく飲みはじめます。
まさに「力水」だったのか、若者は見違えるほど元気に。
そしてバッグから財布を取り出し、硬貨をその女性に差し出しました。
女性は笑顔で「受け取り拒否」。彼はみたび頭をさげて、硬貨を財布に戻し、またジュースをラッパ飲みしはじめました。
わたしは、その光景を見たあとすぐに到着した駅で下車してしまいましたが、そのあと彼が電車を降りるまでに、あと2回頭をさげたことは想像できます。
とまぁ、電車に乗っていると実に様々なことがあるという話で。
ここまでが前フリっていうんですから我ながらイヤになってしまいます
じつはやはり京浜東北線でのことなんですが、もう少し前の話。
午後で、上りの車中はガラガラ。
わたしはいつもどおり座席にすわって古い本を読んでおりました。だいたい電車中は読書タイム。半分はそれが目的でもあるのです。
しかし、向かいのドアの前に立ち外の景色を見ている男がどうも気になります。
うしろ姿しか見えませんが、歳のころなら60代後半、わたしにとったら兄貴分といった感じ。
背丈は5尺3寸、そこまで古くいうことないな。まぁ、160センチ足らず。
髪の毛は白髪まじりの大工刈り。
白のTシャツと半ズボンから出た手足は赤銅色でなおかつ逞しい。
足元はずいぶん履きこんだとおぼしき雪駄。
一見して職人、いや半纏を着せれば江戸前の鳶の親方ができあがろうという様子。
深川や浅草あたりに行くと、こういう鯔背(いなせ)なおじさんはよく見かける。
濃い眉毛にドングリ眼、鼻は厚くて高くて頬はふっくら。というのはわたしのイメージで、車窓から景色を眺めている兄貴の顔は見えません。。
電車中ではあまりみかけない様子の人。
だから目がいったのですが、しばらくしてあることに気づき、さらにその兄貴が気になってしまったというわけ。
それは半ズボンの尻ポケットに突っ込んだ新聞。
となると、すぐ思いつくのが競馬新聞。
きょうは平日。浦和で競馬があるわけでもない。
さらによくよくみるとその新聞、なんと英字新聞。
鳶職人とニュースペーパー、このギャップはおもしろい。
そうなるとどうしても見たいのが御面相。まさか、英字新聞の「理由」は訊けませんが。たんなるハッタリだったりして……。なことないわな。
で、さいわい、わたしと同じ乗換駅で下車。
ところが足が速い。
乗り換えの清算をしているうちに、とうとう見失ってしまいました。
まるで結末寸前にフィルムが切れて中断した映画のようで(いまどきないよ)。
しかし、つまらない結末で終るよりは、「余韻」が残って、「鯔背な兄貴の物語」は、より「名作」としてわたしの記憶に残ったのかも。
では、今回はギャップが強烈だった新聞紙の歌を。
ただの「新聞」ならば山田太郎の「新聞少年」とか、
♪今朝来た 新聞の 片隅に 書いていた
という井上陽水の「傘がない」などいくつかあります。とりわけ友部正人はわたしが知っているだけで「ストライキ」「大阪へやって来た」「公園のベンチで」と3つの歌に出てくる。
しかし「英字新聞」となるとなかなか。
それでも思いついた邦楽と洋楽、合わせて2曲をどうぞ。
熱中症を救った若いお母さんえらい。英字新聞持った兄いかっこいい。それを記事にした人はもっとかっこいい。
by にしにし (2011-07-18 17:54)
お元気そうでなによりです。
電車中ってほんとに不思議な劇場空間ですね。
まだまだおもしろいことがたくさんあります。
そのうちブログに書きたいとおもっています。
by MOMO (2011-07-20 02:45)