三つの歌●六月 [day by day]
六月をタイトリングした歌といえば……。
ザ・ピーナッツの「ジューン・ブライド」しか思い浮かばないなぁ。
しかも、ヒット曲というほどではないようで、YOU-TUBEもない。
ビッグ・イヴェントもなければ、祝日もない。ほんとに「梅雨」以外はなんもない六月。
だから歌もない。
なんてことはなくて、六月の歌はそこそこあるんです。ただ知らないだけ。
多いのは「雨」の歌。やっぱり。
「六月の雨」という歌をうたっているのは、松山千春、小椋佳、谷村有美などがいて、矢沢永吉にも「六月の雨の朝」がある。
でも、五月も「五月雨」で「雨」だったし、また雨かよ。雨はもうたくさんだよ。という気分もありますので。
雨の降らないスカッとした(言い方が旧い)六月の歌を。
トップバッターは(言い方が旧い・以下省略)、チェリッシュ。
チェリッシュといえばウエディングソング「てんとう虫のサンバ」があるので期待できます。「六月」が出てくるのは「海の見える部屋」。
♪二人で暮らした 海べりの部屋を 出て行くの 六月の朝に
って別れの歌でした。それも結婚あるいは同棲していたカップルが別れるというのだから決定的。
六月といえば冒頭でもふれましたがジューンブライドなんだけど、離婚もそこそこ多いのでしょうか。
ある統計によれば、結婚も離婚も多いのは年度末の3月。日本人らしいといえばらしい。
離婚に関していえば、六月は十一月に次いで2番目に少ない月だとか。
まぁそんなことはどうでも。
「海の見える部屋」はチェリッシュのピークを過ぎた時期の歌。作曲はムード歌謡の帝王・吉田正でしたが、ヒットするまではいきませんでした。でも、けっこう好きな歌。
お次は。
荒木一郎。……あゝ、なんとなく空もようが……。雨かな。よくて、曇り空。
これが加山雄三だったら、さんさんの太陽に雲の影だに見えない青空、ってことになるんだけど。
とにかく歌は「君に捧げるほろ苦いバラード」。もうタイトルからして鬱陶しかったり。
♪六月の空をみれば まぶしすぎる僕だよ
荒木一郎の場合は「六月の空」。
でも、「まぶしすぎる」といってますから、雨ではない。
明るい曇り空というのもありますが、快晴、青空という可能性も。
しかし「君に捧げるほろ苦いバラード」そのものは暗い、梅雨空のような歌です。
やっぱり恋人との別離をうたっています。今度は男の側から。
その別れもどこか死別のような。そして、彼も後追いをしそうな。そんな雰囲気をただよわせた歌です。
とチンパンジー、いや一般人(古典的ボケ)は思ってしまうのです。
ところがこの歌の「君」とはどうやら荒木氏が飼っていた愛猫のことらしい。
そういえば彼の「愛しのマックス」も愛犬をうたった歌だとか。
甘いメロディーもいいけど、デキシー風のアレンジが素晴らしい歌です。
2曲終わって、どうも六月の空はすっきりしません。
そして最後の三曲目。これも「六月の空」がうたわれています。
曲は「G線上にひとり」、うたうのは森田童子。
もう、名前が出た時点でアウト。明るい歌なわけがない。
♪何にもいわない 六月の空は 僕の好きな 水色です
まぁ歌の「明暗」はともかく、いいですね、いつもながら彼女の歌詞。みずみずしくって。
深刻にならず、さりとてディープで儚い孤独をうたうのが上手。
解説するのは野暮だけど、六月の空の色が灰色ではなく、かといって青でもなく水色というのがいい。ただの水色ではなく、僕の好きな水色というのがまたいい。シツコイか。
この歌、森田童子ベストコレクション「僕たちの失敗」のなかの一曲なのですが、若草恵の編曲も格調があってすばらしい。
それでも「水色」ですから、六月の空はようやく晴れました。
えっ? 「空は晴れてもこころは闇だ」って?
またずいぶんいにしえのセリフを。いまどきの人にわかりますか、この名セリフは吐いた人(実在の人物じゃありませんよ)。
美樹克彦じゃないかって?
残念でした、それは「どんなに空が晴れたって それが何になるんだ…………バカヤロー」です。
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