三つの歌③雨―邦楽篇 [day by day]
毎日毎日しょぼしょぼと降っております、雨が。
なんでも日本では3日に2日はどこかしらで雨が降っているのだとか。
東京でいえば、数字的にはほぼ1週間に2日は雨となるそうです。
実感ではもっと少ないけど、けっこう降ってます。量はともかく。
ほんとに多い雨ですけど、いにしえの人々はそんな雨にいろいろな名前をつけています。
ちょっと降ってすぐに止む雨が「にわか雨」とか「通り雨」。
それが秋から冬にかけての冷たい雨だと「時雨」(しぐれ)。
夏の夕暮れに降れば「夕立」。
短時間に大量に降る雨は「驟雨」。「篠突く雨」なんて言い方も。
長い時間をかけて降るこまかい雨なら「小糠雨」(こぬかあめ)。
ほかにも季節によって「春雨」だとか「秋雨」だとか、いまの時期なら「梅雨」や「五月雨」(さみだれ)。
邦楽でも「雨」は歌謡曲にしろポップスにしろ“王道”。
「雨か涙か、涙か雨か」っていうぐらいよく降ってます。
あまり多すぎて目移りしちゃうので、ここは絞って季節からいってもふさわしい「五月雨」を。
J-POPでもいくつかあるようで、YOU-TUBEで聴いてみましたが、最近耳がわるくなったのか、何をいっているのかわからなかったのでパス。
パスしたのはいいけれど、意外とない「五月雨」。
聴き覚えのある「五月雨」は小林旭の「五月雨ワルツ」と伊勢正三のアルバム「北斗七星」におさめられた「五月雨」、そしてYOU-TUBEではじめて聴いたふきのとうの「五月雨」。
なかでもフェヴァリットなのが「五月雨ワルツ」。ただ、残念なことにYOU-TUBEにありません(以前はあったんだけど)。
では伊勢正三かふきのとう、となるのですが、どちらもあえて取り上げるほど好きではないし、思い出もありません。
それならばと、歌詞のなかにでてくる「五月雨」を探してみたら、ちょうど3曲ありました。
うんと古い歌なら、昭和12年の御座敷ソング「蛇の目のかげで」(きみ栄)に、
♪あきらめしゃんせと 五月雨が
濡れて待つ身に 降ったとさ
とでてきますが、これはほとんどの人の耳になじみがないのでパス。
ひとつめは、フェヴァリットソング。
「裏切りの街角」甲斐バンド 昭和50(1975)年
これはつい最近「ハスキーヴォイス」のところで取り上げました。初ヒットとなった彼らのセカンドシングル。
この歌をはじめて聴いたのは30数年前。
そのときの情景はなぜかはっきり覚えています。
印刷工場で働いていたある日のこと。残業をしているとラジオからこの歌が。
はじめて聴く曲だったので「誰だ、これ」と誰にいうでもなく言葉を吐くと、同僚の松ちゃんが「ショーケンだよ」とわけ知り顔で。
なるほどあのハスキーヴォイスは紛れもなくと、納得。
ところがその後ラジオから頻繁に聞えるようになり、甲斐バンドの「裏切りの街角」と判明。
「松ちゃんのヤロウ……」
つぎは、フォークの範疇に入るのでしょうか。
「通りゃんせ」佐藤公彦 昭和47(1972)年
「裏切りの街」がヒットした昭和50年は、ユーミンやグレープが登場し、それまでの“フォーク”が“ニューミュージック”に変わりはじめた頃。
その3年前の47年は、よしだたくろうのデビューが象徴するように、それまでの反戦も含めたメッセージを前面にだしたフォークソングがラブソングに変わっていった時代。
童謡のタイトルそのままの「通りゃんせ」は、和風というか、万葉の匂いまでただよわせたトーチソング。
女歌で、シンガーもユニセックスを感じさせたケメこと佐藤公彦。
ある意味フォークの過渡期であり、百花繚乱のなかに咲いた不思議な歌。
それから数年後にやってくる抒情派フォークを先取りしていたといえなくもない。
ラストは、これ。
「初恋」村下孝蔵 昭和58(1983)年
近年亡くなりましたけど、これまた「踊子」と並んで名曲です。
いっちゃなんですが、村下孝蔵、ビジュアル的には極めてインパクト小。
七三分けの短髪にネクタイとまるでサラリーマン。
小太りで面相もいまでいうイケメンとはお世辞にもいえない。
それがひとたびうたいだすと、自作の美しいメロディーにふさわしい美声と華麗なギターテクニック。
このギャップが魅力でした。
ほら、クラーク・ケントだって普段はさえない新聞記者だったものね。
いま考えると、あれが村下さんの個性だったんだなとわかります。
もし多くのミュージシャンがそうだったように、長髪、ジーパン、あるいは見栄えのいい派手な衣装だったら、さほど印象に残らなかったかも。
とにかく歌だけで勝負した数少ないシンガーソングライターでした。
それにしても五月の雨が「さみだれ」とはね。
五月では、五月の蠅が「うるさい」で、五月の女が「さおとめ」だもんね。
ほかにも五月の病(やまい)で「ノイローゼ」なんて、いわないか。ふつう「ごがつびょう」だよね。
では五月生れの子、すなわち五月の子、「五月子」は?
そうです、ご想像どおり「めいこ」ですね。むかしは「ごがっこ」なんていうのもあったけど。
ではもうひとつ、五月の馬つまり「五月馬」は?
「めいば」つまり「名馬」だろうって?
残念でした「ダービー馬」でした。
やられちまったよ、昨日は。
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