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VOICE⑨幼声(ベイビーヴォイス)▼邦楽篇 [noisy life]

中島そのみ.jpg

♪花の都のどまんなか ソレ
 ザギンのちゃんねだ 任しとキ
 解りゃいんだが 解らなきゃ
 解るまで教えてやってもいいんだぜ
 ぐづぐづいうない 任しとキ ソレ
 モタモタしてると明日になっちゃうぜ
 何でもかんでも 任しとキ
 お色気戦術任しとき
 フンフン ウンウン ウンウン
 ザギンのトップレディ お姐ちゃん
(「お姐ちゃんに任しとキ」詞・曲:神津善行、歌:中島そのみ、団令子、重山規子、昭和35年)

「まだやってんのかよ」
という声が聞えてきそうですが、まだやるんです。といっても今回と次回の2回、キリのよろしい10回で打ち止めということに。

いろいろ理屈をこねてまいりましたが、最後はベイビーヴォイスで。

ベイビーヴォイスとは、舌足らずといいますか、甘え声といいますか、直訳の赤ちゃん声っていうとちょっと違うようで、まぁ「幼声(おさなごえ)」ですか。「ようせい」なんて読んでいただいても結構ですけど。
そして、例外もありますが、ふつうはまぁ高めの声ですね、なにしろ「幼声」ですから。

男はだいたいそうしたベイビーヴォイスが好きなんじゃないんでしょうか。
「俺はそんな甘ったれた声はごめんだね。低くて艶のある声のほうが理知的でいい」
なんて、のたまっていても、いざ「幼声」があらわれて眼の前で「ふにゃふにゃふにゃ」なんて調子で喋られた日にゃ、思わずニッコリの骨抜きもんでしょう。

それでも頑なに「ベイビーヴォイスなんて、かんべん」とおっしゃる御仁も、これから紹介する「米兵衛ズ」の歌の数々を聴けば、「イカすぜベイベー」と思ってくれるはず(だと思うんですけど……。

J-POPでもいますね、ベイビーヴォイスが。
悲しいかな名前が出てこない。

ついこないだもブック・オフへ行ったらBGMでJポップが流れていました。
でも、どれもこれも同じに聞えちゃう。ちゃんと聴こうという気がないからですね。

どの曲もサビが終わったあたりで「冷やし中華、はじめました」って続きそうな気がしちゃったり。

こんなこと書いてるから長くなるんだよな。

ちょっと前ならCharaがそうですよね。これはかなり強烈なベイビーヴォイスでした。

でも、例によってこのブログに出てくるのは古い人や古い歌手。あしからず。

古いといっても戦前までは遡らない。
だいたい渡辺はま子にしろ李香蘭にしろ、高音ではありますが、舌足らずって感じじゃありません。
ベイビーヴォイスっていうのはいわば「ファニー・ヴォイス」でもあるわけで、クラシック畑か花柳界からのトラバーユが主流だった戦前の歌謡界では、そういう幼声は嫌われたのかも。

そんなわけで、以下紹介するのは、わたしがリアルタイムで聴いた戦後のベイビーヴォイス。

いちばん古いのは昭和29年デビューの雪村いづみ
元祖三人娘のひとり。ほかの二人つまり美空ひばり江利チエミが天才肌だったのに対して彼女は努力で歌唱力を磨いてきた人。

当時はたいへんな美少女で、それに加えてのベイビーヴォイスですから、男がほうっておくわけない。浮名を流した数も三人のなかではいちばん。

その少し後に出てきて、超売れっ子になったのが中島そのみ

長野の出身で昭和20年代後半、当時流行の最先端だったドレメに通うべく上京。
それがどこでどういう風が吹いたのか、チャック・ワゴン・ボーイズというカントリーバンドのヴォーカルに。
当時はベイビーヴォイスなんていわずに、「突飛な声」なんていわれてました。

師匠はどうやらレイモンド服部のようで、「チャチャチャ天国」「西部のM型娘」など彼の作品を多くレコーディングしています。
ということは小坂一也の妹弟子にあたるわけで、彼とのデュエット曲をレコーディングしたり、ジョイントコンサートをしたり。

昭和32年、日本ポップスの夜明けともいうべき第1回ウェスタン・カーニバルにも出演しています。
そのままいけばロカビリアンに、さらには歌謡界へなんてことも可能だったかもしれませんが、あまりロカビリーが好きじゃなかったようで、バンドを離れて独立。

しかし、その特異な声とキャラクターが買われて映画に出演。
34年には東宝の団令子、日劇ダンシングチームの重山規子とトリオを組んだ「大学のお姐ちゃん」がヒット。そこで中島そのみも全国区に。
以後「お姐ちゃんシリーズ」として8作公開されたとか。そのなかで「お姐ちゃんに任しとキ」など主題歌をレコーディングしています。

もうすこしカントリーを極めてほしかったですが、シンガーとしての最大のヒット曲はテレサ・ブリュワーTeresa Brewerのカヴァー「フラフープ・ソング」だそうです。

そして38年、テレビ局のディレクターと結婚し芸能界を引退。

そのほか30年代では、ガールポップスの田代みどり斎藤チヤ子
田代みどりは当時ローティーンということもあって、ベイビーヴォイスあたりまえかなとも思いますが。斎藤チヤ子はカントリー娘らしく鼻にかかった感じがなんとも幼声。

もうひとり歌う映画スターの本間千代子も。
童謡歌手だった幼い頃そのままの声だけ成長が止まってしまったって感じ。……ちょっと大げさですが。三島由紀夫は彼女のことを「杏のような少女」と称しました。座布団七枚。

40年代になるとなんといっても山本リンダ
わたしとほぼ同年代だと思いますが、「困っちゃうな」で出てきたときは「何言ってんだかこのカマトト娘が」と思ったものです。

雌伏6年、一発屋の危機を「どうにも止まらない」でみごとに乗り切りました。
それもカマトト娘がカマキリ女?に大変身して。
でも、どんなにスゴんでみてもベイビーヴォイスは隠せません。
還暦になろうというのにいまだにだもの、スゴイよなぁ。

ほかではチェリッシュ悦ちゃん日吉ミミ、さらにはテレサ・テンも40年代組の幼声。

50年代あたりからベイビーヴォイスに興味がなくなってくるのですが。
多分、アイドル歌謡全盛で「ブリッ子」なんて言葉が流行ったように「作られたベイビーヴォイスの時代」だったからかもしれません。

それでもベイビーヴォイスだなぁと思えたのが舌たらずの太田裕美石川ひとみ。二人とも歌い方がとてもナチュラルでしたよね。

石川ひとみといえば、先日、某作家の本を読んでいたら出てきました。その著者、わたしより10は若いですから、石川ひとみと同世代なのでしょう。そしてファンだったのでしょう。わざわざ書くくらいですから。

で、彼曰く(手元に本がみあたらないので記憶に頼って)はじめは可愛かったけど、しばらく経つと妙に“しょんべん臭い”女に思えた、と。

読んでて思わずツッコんだね。
〈三十過ぎまで童貞だったおめえが言ってんじゃねえよ〉って。

これはちょっと暴言、いや“暴想”だったかもしれません。
たしかに、当時でも時代の最先端をいくような派手さはなかったかも。でもそういうところがよかったんじゃないの。

そして著者はさらに、でも今時々ナツメロ番組で見る石川ひとみはいい女になっていた、とフォローしていました。

思わず本から眼をあげてまたまたツッコんだね。
〈そいつはお前さんが、たんに歳をとったってことだよ、アハ〉って。

まぁどうでもいいことですが。

50年代で追加しておきたいのは鮎川誠の女、シーナ山下久美子

そして60年代になるのでしょうか、演歌畑からもひとり、香西かおりを。
演歌のベイビーヴォイスっていうのもめずらしい。そのミスマッチがGOOD。もうひとりあげるなら、森山愛子。彼女の場合どちらかといえばベイビーフェイスかも。

ところで音楽のメディアはレコードからはじまって、テープ、CD、MD、さらにはiPodなどのデジタルプレイヤーと変遷をかさねてまいりました。で、ベイビーヴォイスの魅力が最も再現されるのはどれだと思います?

人肌感のあるアナログのレコードじゃないかって? 
残念でした。正解はCD。
だって言うじゃないですか、“ベイビーCD”って。張々。


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