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VOICE⑤ハスキー/女編 [noisy life]

私は泣いています.jpg

♪私は泣いています ベッドの上で
 私は泣いています ベッドの上で
 あなたに逢えて 幸せだった
 昼も夜も 帰らない
 あなたがいたから どんなことでも
 なりふりかまわず 歩いてきたの
(「私は泣いています」詞、曲、歌:りりィ、昭和49年)

女性もそうかもしれませんが、多いですね、ハスキーヴォイスが好きだという野郎どもは。
なんででしょうか。
前回もらしきことをいいましたが、乱調の美というのか、不良への憧憬のようなものがあるのでしょうか。

また、ハスキーヴォイスには夜やアバンチュールの匂いがあって、それが人間のもっている不道徳な部分を刺激してきたり。またそういうシンガーはそういった歌をうたうんだ、これが。(あくまでわが貧困なるイメージの話ですからね)
能書きはどうでも。

ハスキーヴォイスで注目されたのは、男が森進一なら女はやはり青江三奈姐御でしょうか。

青江三奈。元祖茶髪ですね。
半世紀近く前に、黒髪を金や茶色に染めていたのですから、かなり前衛的でした。

デビューは森進一と同じ昭和41年。ハマクラメロディーに川内康範が詞をつけた「恍惚のブルース」。たしか、川内康範が週刊誌で連載していた小説を歌謡曲にしたもので、青江三奈という名前もヒロインかなにかから命名したものではなかったでしょうか。

森、青江ともにビクターレコードで、当時はハスキーヴォイスとはいわずに“ため息路線”なんていってました。

まぁ、パツキン、ハスキーとくればキワモノの一発屋でもおかしくなかったのですが、そこはナイトクラブやライヴハウスで鍛えた歌唱力、そんじょそこいらの新人歌手とは集合住宅、いやダンチ。

デビュー曲はそこそこヒットして紅白歌合戦出場をはたしましたが、第二弾でつまずいて翌年はサッパリ。
ところが43年になるといきなりかの「伊勢佐木町ブルース」が大ヒット。
同じ年に「札幌ブルース」「長崎ブルース」とヒットを連発してブルースの女王に。

さらに翌44年には彼女の最大のヒット曲となる「池袋の夜」をリリース。一時代を築くシンガーとなります。
下地のあったジャズをはじめとする洋楽や、歌上手ならではのナツメロをはじめとするカヴァー曲も聴かせてくれます。

60歳を前に亡くなってしまいましたが、もっといろいろな曲を聴きたかった。とりわけ古賀、吉田、服部メロディーのカヴァーで聴きたい曲はいくつも。
決して美人ではないけれど、庶民的な(なんて表現)顔立ち。話す言葉のはしはしから感じられる気さくで人のよさそうな性格。ファンはそんなところに魅かれたのでしょう。もちろん、ハスキーヴォイスにもですけど。

それでは、そのほかの“愛すべきハスキーヴォイス”の数々を。

戦前の擦声女性歌手は思いつきませんが……、笠置シヅ子は近いけどハスキーっていうほどでもないし。

戦後になってもやはり、プロの歌手とは美声というか滑らかな声があたりまえ、という風潮。そんななかで出てきたのはやっぱり洋楽系。
それはヘレン・メリルHelen merrillやジュリー・ロンドンJulie Rondonといったスタンダードをうたうヴォーカリストの影響が少なからずあったのでしょう。
「ああ、ハスキーでもいいんだ」というよりは、ハスキーの方がああした彼女たちの魅力に迫りやすいということだったのでは。

江利チエミ その代表が彼女でしょう。昭和20年代後半から30年代にかけて、洋楽ファン以外の日本人にもジャズやスタンダードヴォーカルの魅力を教えてくれたのが彼女ではなかったでしょうか。洋楽系では沢たまきも、江利チエミよりはさらに大人の雰囲気で男どもを魅了したハスキーヴォイスでした。

浅川マキ 昭和40年代というよりは西暦の60年代から70年代にかけて、アングラシーンで女王に君臨したのがこの人。ロングヘアに眼が隠れるほどのつけ睫毛、そして闇に溶けそうな黒のロングドレスときたら、声はもうハスキーに決まっている。

りりィ 前回私的「ミスター・ハスキー」がもんたよしのり、といいましたが、「ミス・ハスキー」はシンガー・ソングライターのりりィ。デビューしたての頃はスージー・クワトロSusi Quatro のようにベースをかかえてうたっていました。自作の「私は泣いています」は名曲中の名曲。
現在は女優の方がめだちますけど。

大信田礼子 りりィより少し早く歌謡ポップス「同棲時代」をヒットさせました。この頃まで常識だったいわゆる「歌う女優さん」。歌手としては決して上手ではありませんでしたが、独特の雰囲気を醸し出していたのはやはりハスキーヴォイスだったから。

葛城ユキ ポップコン出身で、80年代に入り「ボヘミアン」でブレイク。ロック系といいますか、シャウトするシンガーにはハスキーヴォイスはうってつけ。ほかでは元バービーボーイズの杏子、SYOW-YAの寺田恵子とか山下久美子中村あゆみとか。

八代亜紀 青江三奈も「演歌」にジャンル分けされますが、どうしてもポップスやスタンダードの雰囲気が残ります。そういう意味では「純演歌」のハスキーヴォイスといえば八代亜紀。
2人を比較すると、八代亜紀の場合は“可愛い女度”が強すぎて、青江三奈のような大人の雰囲気がないような。言い方をかえれば青江三奈がドライなのに対して、八代亜紀はウェット。……どちらも好きですが。なもんで、いまとなっては2人のデュエットは貴重中の貴重。ハスキーの狂犬、じゃなくて共演を。

ケイ・ウンスク 演歌ではこの人も。八代亜紀以上にそのハスキーヴォイスを前面に押し出して、つまりウリにしている歌手。
ご存じのように何年か前に覚醒剤で事件を起こして、しばらくは来日できないようです。韓国ではもはや歌手活動を始めているということも聞きますが、日本では未だ。たしかビザが下りないのが5年だったはずですから、そろそろ復帰するかもしれません。もっとも日本のメディアが受け入れればですが。

ところで、何気なく流行歌を口ずさむような人間にとっては、誰もが歌を好きだろうと思いがちです。ところがさにあらず。なかには流行歌なんてまるで興味がないという人間だって。

わたしの知り合いの兄哥にもそういう“話せない”人間のひとり。
職人なのでなおさら解せない(それも偏見。職人だって演歌嫌いはいるし、趣味クラシックという御仁もいる)。

そんな兄哥が酒の席で、わたしを流行歌好きと知っていて言ったひとこと。
「演歌は好きじゃないけどよぉ、ケイ・ウンスクはいいよなぁ」
聞けばあのハスキーヴォイスが「堪らん」とか。

もちろん、兄哥がケイ・ウンスクを好きなのは、ハスキーヴォイスがだけではなく、その容姿や雰囲気もあるだろうし、うたっている楽曲に魅かれたということもあるでしょう。
しかし、もしケイ・ウンスクがハスキーヴォイスでなかったら、はたしてわざわざCDプレイヤーまで買っちゃうほど好きになっていたかどうだか。

音楽嫌いまで“吸引”してしまうハスキーヴォイスの“魔力”たるや想像以上にスゴイのかも。それともかの兄哥が人並みはずれてハスキーヴォイスに共振する人間なのか。
今度会ったとき、青江三奈のCDでもプレゼントして、その感想でも聞いてみようかな。


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