VOICE①高音 [noisy life]
♪雪が降ってきた ほんの少しだけど
私の胸の中に 積りそうな雪だった
幸せをなくした 暗い心の中に
冷たくさびしい 白い手がしのびよる
(「白い思い出」詞、曲・山崎唯 歌・ダーク・ダックス他、昭和43年)
ダーク・ダックスの高見沢宏さんが亡くなってしまいました。
そのまえには「けいちゃん」こと山下敬二郎さんが亡くなっている。
ともに70代でまだまだという思いです。
昭和30年代がますます遠ざかっていくような。
高見沢さんはダークのなかでトップテナーを担当していました。テナーつまりテノールは男の声域の「高音」ですね。
山下の敬ちゃんもまた、高音のロケンローラーでした。
だいたい日本の流行歌の場合、とりわけソロシンガーでは比較的高音が主流ではなかったでしょうか。音域が広かったりファルセットがつかえたりというケースもなくはないですが。
最近のJポップは、といってもまるで疎いのですが、B’zとか平井堅などはそうじゃないでしょうか。女性ならば広瀬香美、演歌でいえば氷川きよしも高音の部類でしょう。
古に遡って、戦前の歌謡曲ではまさに「高音主流」がみてとれます。
代表的なシンガーをあげると、まずは藤山一郎。
ほかでは、
松平晃がそうですし、楠木繁夫もそう。さらに灰田勝彦も
またジャズの二村定一、中野忠晴がそうですね。
戦後になっても、高音シンガーは続きます。
昭和20年代でいえば、近江俊郎、岡晴夫、小畑実、岡本敦郎、津村謙。
さらに30年代になっても、
三橋美智也、春日八郎、若原一郎、曽根史郎、藤島桓夫、真山一郎、三波春夫、小林旭、井沢八郎、白根一男、北島三郎、佐々木新一と出てくるわ出てくるわ。
なんでですかね、この「高音天国」。
ハイトーンの歌声というのは、リスナーにとって心地よいというか、気持ちを高揚させてくれる効果があるのでしょうか。また、高音の方が聴きとりやすく歌詞がはっきりと伝わってくるということもあるのかもしれません。
ただフォークやニューミュージックの時代になると、さすがに「天国」とまではいえなくなります。もちろん井上陽水や松山千春など「高音シンガー」もいますが、決して主流ではなく、どちらかといえばマイノリティーになってきます。
となると、戦前から昭和30年代あたりまでの「高音主流」の現象は、クラシックの歌唱法をひきずった、いわば「高音信仰」というか、制作側およびリスナーの大いなる錯覚だったのではないか、という気さえしてきます。
女性の場合は、もともとが男より高音ですし、戦前はいまいったようにクラシックに影響された歌唱法で男性同様「高音天国」だったようです。
そんななかでもよりハイトーンだったのは、小林千代子、渡辺はま子、ミス・コロムビア、松島詩子、市丸、小唄勝太郎などが戦前。
戦後では並木路子、菅原都々子、島倉千代子、花村菊江、野路由紀子、日吉ミミ……など思いつくままに。
最後に、亡くなった高見沢さん、敬ちゃんを偲んで、
ダーク・ダックスとロケンロールを。
だいぶ出遅れましたが、みなさま今年もよろしくお願いします。
コメント 0