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秋歌②虫 [noisy life]

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♪………………
 夕焼け雲さん 伝えてくれよ
 あの娘の お部屋の 窓際へ
 虫にさされるのは いやだけど
 肩をならべて いたいよと

 こんな河原の 夕暮れ時に
 呼び出したりして ごめんごめん
 笑ってくれよ ウフフとね
 そんなにふくれちゃ いやだよ
 …………
(「夕暮れ時は淋しそう」詞・曲:天野滋、歌:NSP、昭和49年)


いきなりの秋ですねぇ。余韻なしのあきですねぇ。……おまけに雨まで降っちゃって。
昨日なんか、低い雨雲が垂れこめて、いつも電車中から見えるスカイツリーのてっぺんが雲の中。それはそれで風情ものでした。

いまは雨も上がって、夜のしじまに耳をすますと、あれはたしかに秋の音。
そうです、ジージーという虫の声

蝉が盛夏を告げる音ならば、虫の音はまさに秋の到来を報せる音。
そんな秋の朝、天気予報で予報士が「もう暑くなることはありません」と断言。
……そこまではっきり言われちゃうと、つい数日までのあの猛暑がみょうに懐かしくなったりして……。

気を取り直しまして。
虫の歌といえば、定番の唱歌「虫のこえ」があります。
♪あれ松虫が鳴いている……
というヤツ。いまの小学生は音楽の授業でうたうのでしょうか。

いきなり「あれ」ではじまるところが唱歌っぽくていいですね。
流行歌じゃこうはいかないでしょ。
いや、待てよこんなのがあったっけ。
♪あれをごらんと 指さすかたに…… 「大利根月夜」田端義夫
こんなのもあった。
♪あれは二月の寒い夜……「ざんげの値打ちもない」北原ミレイ

ちょっと違うね。

とにかく唱歌「虫のこえ」には、松虫に続いて「鈴虫」、「こおろぎ」、「くつわ虫」「うまおい」が出てきます。

こういう具体的な虫の名前が出てくる流行歌もたしかにあります。
たとえば知られたところではチェリッシュ「てんとう虫のサンバ」とか、氷川きよしには「でんでん虫」とか。
変わったところではなぎら健壱「葛飾にバッタを見た」とか。

歌詞に出てくるものではチューブ「あー夏休み」に鈴虫がでてきたり。

ほかにズートルビー「水虫の歌」なんていうのもありましたし。
そんなんでよければ、「泣き虫」、「弱虫」「いじけ虫」なんかもありますし、「腹の虫」に「浮気の虫」って、そんなところまでいくつもりは毛虫、いや毛頭ありませんでして。

ただ、流行歌の場合、虫に関してはあまりディティールに拘らないようで、ただの「虫」とか「虫の音」というのが多いようです。

上に歌詞をのせたNSP「夕暮れ時は淋しそう」の虫は、「刺す」ようなのでかなり限定的。刺す虫といえばハチやアブもいますが、だいたいは蚊でしょう。

NSPは岩手出身の3人組叙情フォークグループで、デビュー当初は “略称”ではなく「ニュー・サディスティック・ピンク」といってました。

ほとんどの曲の作詞作曲をてがけた天野滋さんは残念ながら数年前に亡くなっています。

叙情フォークに徹底したバンドで、ほかにも「赤い糸の伝説」「線香花火」「遠野物語」「雨は似合わない」なんていい曲がありました。
とりわけデビュー曲の「さようなら」
「さよなら」「さようなら」の曲は数々あれど、わたしのなかではNSPがいちばん。

「夕暮れ時は淋しそう」もオカリナを使った叙情的なメロディーにのせて、あまり女の娘にモテそうもない男のつぶやきがとてもユーモラスでユニーク。
彼女になんとか逢いたいんだけれど、でも虫に刺されるのはいやだなぁなんて現実的なことを思っちゃう。

♪ごめんごめん ってすぐ謝っちゃうところがいかにも人が好さそうです。
そういう男が必ずしもモテるとは限らないところが人の世のうらめしいところ。何をいってんでしょ。

ところで、「蚊」の出番は夏ではないかという気もしますが、この歌の場合、「夕暮れ時」とか「淋しそう」という歌詞がどことなく秋をにおわせます。体験上からも秋に蚊がでてもすこしもおかしくない。

実際、俳句の季語にも「秋の蚊」はあります。別の言い方で「哀れ蚊」(あわれが)なんていったりもします。

さだまさしの秋歌「晩鐘」のなかにも、
♪時を失くした哀れ蚊のように
とでてきます。

そんなわけで「夕暮れ時は淋しそう」をあえて秋の歌としてとりあげてみました。

どうやら「虫」は叙情フォークの専売特許(いまどき言わねえだろ)のようで、
「通りゃんせ」佐藤公彦では
♪八月葉月の虫の音は……
とあります。

また、さだまさしの「線香花火」にも
♪虫の音に消えそうな 小さな声で……
と出てきます。

どちらも夏真っ盛りじゃないかって?
たしかに。
じゃ、こんなのはどうですか。
♪秋の夜はふけて すだく虫の音に 「倖せはここに」大橋節夫とハニー・アイランダース

ちょっと、いやだいぶ古かったけど。

まぁ、どれもこれも虫であっても「蚊」ではありませんけれど。

ところで「哀れ蚊」ですが、俳句では「残り蚊」とか「なごり蚊」などともいうようです。

とにかく秋の蚊ですから、夏の勢いはない。蚊遣り線香なんて使わなくても、早晩お亡くなりになることはあきらか。
そんなわけで、昔から「哀れ蚊には殺生はしない」といって見逃してやるのが、“人の道”なんだそうです。必殺キンチョールなんてもってのほか。

哀れ蚊に 仏ごころで ムヒを塗り


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