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RED/紅い花① [color sensation]

ちあきなおみ02.jpg 


♪昨日の夢を追いかけて
 今夜もひとり ざわめきに遊ぶ
 昔の自分がなつかしくなり 酒をあおる
 騒いで飲んで いるうちに
 こんなにはやく 時は過ぎるのか
 琥珀のグラスに 浮かんで消える 虹色の夢

 紅い花 想いを込めてささげた恋唄
 あの日あの頃は 今どこに
 いつか消えた 夢ひとつ
(「紅い花」詞:松原史明、曲:杉本真人、歌:ちあきなおみ、平成3年)

花の色といえば赤白黄色に橙紫というのがほとんど。
なかでも、なにかにつけて人間の目や気を引くのが「赤」。
赤いものに反応するのはどうやら牛だけではないようで。

今の季節なら皐月、躑躅に始まって薔薇、チューリップ、ベゴニア、カーネーション。まだまだありますスイトピー。ひなげし、デイジー、千日草と、百花繚乱。

たんに「花」といっただけで「赤」を連想する人が多いのではないでしょうか。それぐらい代表的な色なのかも。
それだけに「赤い花」もしくは「紅い花」というのは、さらに「赤」を強調しているようで相当強いインパクトに。

たとえばヨーロッパの言葉には性別があって、名詞なら女性名詞と男性名詞があります。
フランス語でいえば太陽soleilは男性であり月luneは女性に。日本人の共通認識からいうと、天体に性差を感じることはあまりありません。ただ、いわれてみれば納得できないこともないようで。

「花」fleurはどうかというとこれもフランス語では女性名詞。これはなんとなく日本人でもストレートに頷けます。日本にははっきり男性名詞、女性名詞の区別はないにしても、「花」には「女性」のメタファーがあります。「可憐な花」といって男性をイメージする人はごく稀でしょう。

では「赤」Rougeはどうかというと、これがフランスでは男性名詞。ちなみに黒noirも男性。というか、フランス語では色は男性名詞になるようで。
このへんが日本と違うところで、日本なら赤は女性、黒は男性というイメージが一般的。

余談はさておき、日本の場合、「赤」も「花」も女性のイメージで、「赤い花」といったらもうこれはほとんど女性。そして男(の歌手)がそういう場合はほとんど、自分が思いを寄せるか、かつて寄せていた女性のこと。というのはキャリアそこそこの男ならわかるはず。では世の女性は自分のことを「赤い花」って言っちゃえるものなのか……。

思いは別にして、やっぱり女性の口から自分のことを「赤い花」って言うのはちょっと……。
余談の“マトリョーシカ”になりそうなのでこの辺で本題に(マクラが長い)。
ではそんなストレートな「赤い花」の歌を。

♪赤い花を胸に そぞろ歩きの街あかり 「赤い花」藤山一郎
まずは古いところで昭和8年藤山一郎のビクター時代の歌。ハバネラのリズムは当時としてはとてもモダン。作曲は「侍ニッポン」松平信博で、洋楽といわれても通りそうな洒落た曲。
これは男の“目線”で、「赤い花を胸に」は実際に彼女に贈ろうとした花と、去っていった彼女の面影とのダブルミーニング。作詞は佐伯孝夫

同様の“男歌”が上に詞をのせたちあきなおみ「紅い花」
昔の女の思い出。酒とバラの日々。演歌定番の典型的な“未練節”。
好き嫌いはあるけど、ちあきなおみはやっぱり“女歌”のほうがいい。作曲は平成のかあさんの歌「吾亦紅」で話題になった杉本真人。自身のCDで“セルフカヴァー”している。
そういえば吾亦紅も「紅い花」でした。

ほかではやはり演歌で、
♪思い出の赤い花 こころの花だよ 「赤い花」野村将希
が。これまた忘れられない昔の女。たいがいは「ふたりの愛は永遠と、共に暮らしてみたけれど、苦労のタネはつきない闇夜。やがて喧嘩の売り買いで、意地が言わせる別れの言葉。あれから幾年幾星霜、後悔未練の毎日で、胸に枯れない赤い花。なんてストーリー。

では、視点を変えて“女歌”の「赤い花」を。

演歌なら五木ひろし「紅い花」
♪淋しくないのよ 独りが好きと 爪を噛んでる ああ紅い花
これも演歌からポップスまで日本の歌にありがちな男がうたう“女歌”。
元ママの山口洋子描くヒロインは、お得意の“夜の花”。不幸の影を背負いながらも春を待つという健気な女。

あとはポップス。
♪ あなたが来ない 乗換え駅の ホームに咲いてる紅い花 「紅い花」伊藤咲子
不実な彼をあきらめて、自分を大切に生きていこうという元気で前向きな歌。咲子さんも「わたしは負けない」とうたっています。「乙女のワルツ」のB面。

♪紅い花びらの甘い花が咲く 昼の思い出 夜だけに咲く花 「紅い花」UA
これもロマンチックなトーチソング。「紅い花」は愛の花。届かぬ思いならば、せめて夢の中で咲かそうって、“日本のニーナ”でも心は演歌節とそう変わりません。というか、演歌でもポップスでも今でも昔でも、女ごころ、いや人の気持ちはそう変わるものではないということなのでしょう。

これまた♪ウォーウ ウォウオ の悲しき片想いの歌。
♪最後の涙をあげましょう 二度と咲かない花のために 「赤い花」中森明菜
 赤いその色が溶けるまで せめて見守りたいと…
最近カヴァーアルバムを連発しているアッキーナ(言わないか)の韓流カヴァー。ハートブレイクソングで、「赤い花」は自分の恋心というよりも、幸せだった頃の二人に咲いていた花。

アイドルではこんなのも。
♪赤い花のように 春を告げにやってきて 小さな赤い花 「赤い花」宮沢リエ
春を待つ夢見る少女の歌。チャイニーズ風のメロディーに童謡か唱歌のような健全な歌詞。
「赤い花」は憧れや幸福のようなもので、もしかすると初恋だったり。

最後に“両性具有”のような「紅い花」を。
♪耐える笑顔に陽もさすわ 咲いてふたり 雨に咲く花 赤い花 「紅い花」都はるみ
ド演歌で、いわゆる“夫婦もの”。妻は夫を慕いつつ、夫は妻を労りつ……って歌。これは女でもなく男でもない。つまりふたりでひとつの夫婦の花ということ。
ふたりで育み咲かせた花ということなのでしょう。

わたしは男ですから、当たり前のことながら男の視線。
たしかに脳内アーカイブスを検索すれば「赤い花」のひとつやふたつ(エラそうに)出てきます。それも遠ざかれば遠ざかるほど、当時の交流が少なければ少ないほど、その赤が鮮明に見えてくるもんでして。

それに引きかえ、傍にある花はってえと……。以前は燃えるように赤かったのがすっかり色あせちゃって……。どうにかするとドライフラワーに見えたりして……。
いやいやお互いさまということで。軽口封印。


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