その名は●ゆかり② [the name]
♪あら! ボンジュール 久しぶりね
その後 お変わりなくて?
あれから どれくらいかしら
あなたは 元気そうね
私は 変わったでしょう?
あれから 旅をしたわ
いろんな国を 見て来たの
少しは大人に なったわ
私って おしゃべりね
引き止めて ごめんなさい
あんまり 懐かしくて 声を掛けたのよ…
(「再会」訳詞:矢田部道一、曲:EMIL DIMITOLOV 、歌:金子由香利)
金子由香利は経歴をつまびらかにしないというポリシー(多分)からなのかミステリアスなシャンソン歌手である。
レコードデビューは昭和43年といわれているが、注目されるようになったのは50年代に入っていから。コンサートで彼女の歌に聞き惚れた山口百恵や谷村新司が「素晴らしい歌手がいる」ということから評判になったとか。
またよくいわれるのがデビューまでの下積みの長さ。よくいう“苦節何年”というやつで彼女の場合メジャーになるまで20年以上を要したとか。
生まれは東京で高校卒業後、新劇の劇団で役者をやりながら声楽家の佐藤美子に師事した。
その頃、芸大を出てシャンソン歌手をめざし、銀巴里のオーデションに受かった岸洋子とも交流があったようで(昭和34、5年)やはりシャンソニエの古賀力と3人で勉強会をひらき切磋琢磨していたと。
岸洋子がその頃の金子由香利のことを
「顔立ちがエキゾチックで雰囲気のある歌をうたっていました。そのころから目立っていました……」
と自伝に書いている。
とにかく昭和50年代に入り、コンサートは満員盛況、CDは売れる、おまけに紅白歌合戦にも出場するというように大ブレイクしてしまった金子由香利だが、それまで続けてきた自分のスタンスを変えなかったのは立派。
メディアへの露出が少ない歌手で、それは戦略というよりポリシーのように感じられる。過剰ではと思えるようなコマーシャリズムに対する潔癖性。
彼女ほどのカリスマ性があれば、本業以外でも十分“商売”が成り立つはず。たとえばCM出演とかテレビのニュースショーの司会とかコメンテーターとか。
しかしあくまで自分はシンガーであり、コンサートとCDの販売とそのための準備、レッスンに全力をそそぐといっているように見えるその姿勢。無節操にCMに出まくり本業の何倍何十倍も収入を得てしまう歌手もいるというのに。
「再会」JE N’POURRAI JAMAIS T’OUBLIER は1968年の発表というからさほど古いシャンソン(というよりフレンチポップス)ではない。
歌手でもあるエミール・デミトロフが作曲し「想い出のサンジェルマン・デ・プレ」や「マミー・ブルー」をヒットさせたというニコレッタNICOLETTA がうたった。
原題は「あなたを忘れない」という意味で、昔の恋人と再会した女性が、そのとき恋が終わったことを知り、タイトルの言葉を残して去っていくというストーリー。当初は「過ぎ去りし恋」あるいは「めぐり逢い」という邦題だった。
それを矢田部道一の名訳と、金子由香利のドラマチックな歌唱で彼女の代表曲になっている。また金子以外でもこの「再会」をレパートリーとするシンガーは少なくない。
ニコレッタの歌は聴いたことがないが(その後みつけましたので追加しときます)、多分金子盤よりはもっとあっさりと歌っていたのではないだろうか。YOU-TUBEでみつけたベトナムのンゴッ・ランNGOC LANというシンガーの歌を聴くとそんな気がする。反対にいえば、金子由香利がまったく自分の「再会」に構築してしまい、そしてそれが奏功したということだろう。
ンゴッ・ランについて詳細は知らないが、高音の美しさはテレサ・テンを思わせる。と思ったらこんな歌もあった。余談ですが。
なおインストではポール・モーリアPAUL MAURIAT で聴ける。ヴォーカルがない分、メロディアスであらためてこの曲の良さを味わうことができる。
もう少し余裕があるので、そのほかの「ゆかり」を。
こちらもかなりコダワリが強いと思われるのが、「大西ユカリと新世界」の大西ユカリ。
地元大阪は新世界にこだわり、R&Bと昭和歌謡にこだわるという異色シンガー。
もはや?歳だが、そのハスキーで可愛い声はいまだ健在。
♪やっぱり夢は開かない 馬車がカボチャに変わったの
というイエロースキン・ソウルと演歌がミックスした「顔を洗って出直すわ」などは「おもろうて、やがて哀しき……」という感じ。
ドラマは見たことがないが「男女7人秋物語」の主題歌「Show Me」をヒットさせた森川由加里。
チャキチャキの性格でいちじよくテレビに出ていた。いまはラジオのディスク・ジョッキーやバンド「THE UNIT」のヴォーカリストとして活動中とのこと。
ほかでは昭和50年代のアイドルの山本由香利(デビュー曲「小麦色の想い出」だけ聴いたことあります)とスタ誕出身で「街はおしゃべり」の鯨井ゆかり。
またモデル出身でサッカー選手と結婚した小畑由加里も。彼女は「ONE DAY」はじめCDも数枚リリースしている。
もうひとり、演歌の世界から瑞(みずき)ゆかり。
平成9年に出した「瑞ゆかり ファーストアルバム」というアルバムでは物まねのコロッケや五木ひろしとデュエットしてるくらいで、それだけ期待されていたのだろうが、現在“行方不明”。こういう歌手もそこそこいるんでしょうね。きっと歌よりも素晴らしいものを手に入れたのでしょう。
最後にもう一度金子由香利の話。
彼女のCDを聴くようになったのはリシュエンヌ・ドリールLUCIENNE DELYLEの「サンジャンの私の恋人」MON AMANT DE SAINT-JEAN をうたっていると聞いたから。
まぁ、どんな曲でもパーフェクトに歌う歌手などそうはいないし、好き嫌いもあるので正直初めて聴いたときはさほどいいとは思わなかった。
その曲に関しては以前聴いていた中原美沙緒、美輪明宏、あるいは石井好子、大木康子といったシンガーのほうが伝わってくるものがあった。
しかし、他の曲で収穫があった。それが「再会」であり「スカーフ」であり「18才の彼」だった。(YOU-TUBEにないのでアズナブールCHARLES AZNAVOURの「ラ・ボエーム」LA BOHÈMEを)
改めて考えると新しいシンガーや曲との“出会い”というのは、ほとんどこういう“連鎖”でつながってきたような気がする。
だからもし、リュシエンヌ・ドリールを聴かなければ、いまだ金子由香利を聞いていなかったかもしれない。
こういうのを「縁(えにし)」つまり「ゆかり」というのだろう。
>こういうのを「縁(えにし)」つまり「ゆかり」というのだろう。
座布団10枚!
by toty (2009-04-22 03:04)
totyさん、こんにちは。
座布団ありがとうございます。
倒れないようになるべく「せんべい座布団」でお願いします。
by MOMO (2009-04-24 21:31)
金子さんに、ついては中々解らなくて悔しく思っていましたが おかげ様で色々な事を知る事が出来て嬉しです。 有難うでした。
by 斉藤秀夫 (2011-07-17 19:22)
少しでもお役に立てたのならウレシイです。
金子さん、最近はどうしてるのでしょうか。
まだコンサートをやっているんでしょうか。
いつまでも元気でうたっていてほしいと思うのは
勝手なファンの思いですね。
露出の少ない人だけに気になります。
by MOMO (2011-07-20 02:41)