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春の歌⑥リトル・アニー [noisy life]

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Once more little Annie I must leave you
We shall part at the end of the lane
For you promised me little Annie
You’d be waiting when the springtime comes again

When the springtime comes on the mountain
And the wild flowers scatter o’er the plains
I shall watch for the leaves to return to the tree
And I’ll be waiting when the springtime comes again
([LITTLE ANNIE(WHEN THE SPRINGTIME COMES AGAIN)] TRADITIONAL)

「春また来たりなば」なんて邦題にするのでしょうか、昔の人ならば。
[WHEN THE SPRINGTIME COMES AGAIN]はマウンテンミュージックやブルーグラスではおなじみの曲で、後者では「リトル・アニー」LITTLE ANNIE というタイトルでもうたわれている曲。カーター・ファミリーTHE CARTER FAMILYの歌唱が有名で、作詞作曲がA・P・カーターになっていることもあります。

しかしこの歌、じつは下敷きがあるのです。それが「アメリカ音楽の父」(じゃあ母は?)といわれた作曲家フォスターの「やさしいアニー」GENTLE ANNIE。

スティーヴン・コリンズ・フォスターSTEPHEN COLLINS FOSTER は19世紀半ばのアメリカの作曲家。

幼い頃から黒人霊歌や賛美歌、あるいはミンストレルショー(白人が黒人を真似る大道芸)に親しんでいたフォスターが作曲をはじめたのは13歳のときといわれています。
以後独学で曲作りを始め18歳のときに「恋人よ窓をあけて」OPEN THY LATTICE, LOVE を初めて出版します。その4年後22歳のときに「おお、スザンナ」OH SUSANNA がヒット。
以後、「草競馬」CAMPTOWN RACES、「故郷の人々」OLD FOLKS AT HOME (SWANEE RIVER)「ケンタッキーのわが家」MY OLD KENTUCKY HOME「金髪のジェニー」 I DREAM OF JEANIE「厳しい時代はもう来ない」HARD TIMES COME AGAIN NO MORE「オールド・ブラック・ジョー」OLD BLACK JOE「夢見る人」BEAUTIFUL DREAMERなど後世に残る数々の名曲をつくります。

しかし、著作権のまだ確立していなかった時代、その多くの曲はミンストレルショーの親玉クリスティーCHRISTY にわずかな金額で買い取られてしまいます。
その後、本格的な作曲活動をするため単身ニューヨークへ渡ったフォスターは、チャンスに恵まれず貧困の中大けがを負い、37歳という若さで亡くなってしまいます。
死後にその作品が評価されるようになった典型的な作曲家です。

「ジェントル・アニー」は1856年につくられた曲。
嵐の夜に馬車に轢かれて亡くなったアニーという少女のことを、書いたものだといわれています。
その詞の中で、
「アニー、君がいなくても春はくるのだろうか、野の花は咲き乱れるのだろうか」と「リトル・アニー」と似たようなフレーズも出てきます。

アニーといえば、フォスターがこの「やさしいアニー」をつくる少し前に、スコットランドでも“アニーの歌”がつくられています。
それが「アニー・ローリー」ANNIE LAURIE 。この歌は17世紀に書かれたウィリアム・ダグラスWILLIAM DOUGLAS の詩に19世紀になってから女性作曲家のジョン・ダグラス・スコットJOHN DOUGLAS SCOTT が曲をつけたもの。
アニー・ローリーはウィリアム・ダグラスが恋いこがれた女性。結局その恋は成就せず、「命を捨ててもいい」というアニーをたたえる歌だけが残ることに。

日本では明治17年に小学唱歌として採用され、以後「故郷の空」COMIN’ THROUGH THE RYE とともに代表的なスコットランド民謡としてうたいつがれています。

そのスコットランドで「ジェントル・アニー」というと、嵐を呼んで船を難破させる妖精のことで、はたしてフォスターはそのことを知っていたのかどうか。

もうひとつのアニーの歌といえば、ジョン・デンバーJOHN DENVERの「緑の風のアニー」ANNIE’S SONG があります。
これも奥さんのことをうたったもの。いわば愛妻絶賛物語。
タイトルの「緑の風」はまさに春の象徴。しかし、実は歌詞に「緑」も「風」も出てきません。日本のレコード会社の担当者の命名でしょうか。
まぁストレートに「アニーの歌」とするよりは「緑の風のアニー」のほうが印象的ではあります。さすがプロ。

では実際は春の歌ではないのかといえば、やっぱり「春」っぽいんですね、これが。
この歌ではアニーに「君は僕を満たせてくれる」とうたっていて、その例えをいくつか並べているのですが、そのなかに「まるで春の野山のように」LIKE A MOUNTAIN IN SPRING-TIME というフレーズがあります。
これだけでも、春の歌として十分。……ですよね。

ところでフォスターにはアニーのように女性の名前をタイトルにした歌が多いこと。
その代表的なものが妻ジェーンJANE MACDOWELL をうたった「金髪のジェニー」ですが、ほかにもレミュエルLEMUEL、スザンナSUSANNA、リーナRENA、ローラLAURA 、ネリーNELLY、ドルシーDOLCYなどがあります。
結構浮気者だったりして。そんなことないですよね。いい加減なこといってはいけません。


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コメント 4

レモン

金髪の彼女がいたらと思うことありませんか、日本語をしゃっべってくれて正座の出来るような人が彼女なら楽しいかも知れません。

僕もジョンデバーを最近取り上げてましたが「緑色の風のアーニー」
はいい曲ですね。僕も歌ってみたい曲です。

フォスターは実に故郷を感じさせる作曲家ですね、故郷を本当に愛していたのだと思います。
by レモン (2009-04-05 07:42) 

tsukikumo

フォスター、小学校時代の音楽の教科書に「春風」(Massa's in de Cold Cold Ground )が取り上げられていたのを思い出しました。学校で習う音楽なんてクソみたいなものばかりで、ほとんど忘れてしまっているのですが、この曲だけは琴線に触れたのかウン十年経った今でも唄えます。
by tsukikumo (2009-04-05 13:29) 

MOMO

レモンさん、こんにちは。

金髪ですか、いいかもですね。白髪じゃなくて銀髪っていうのもいいですよね。そうなると黒髪もなんとも捨てがたいし。まぁ、贅沢いってられないので角刈りでなければ、ですね。

フォスターはわたしにとってのアメリカンミュージックのルーツですね。
声楽家やロジャー・ワグナーのような合唱で聴くのもいいですが、バンジョー弾き語りのピート・シーガーのような感じもまた好きですね。

by MOMO (2009-04-08 20:56) 

MOMO

tsukikumoさん、こんにちは。

その「春風」は「主は冷たき土の下」という邦題で知られていますね。
これまたノスタルジックな旋律の名曲ですね。

たしかに音楽の授業はつまらなかったけれど、それでもなんとなく覚えている歌ってありますね。
by MOMO (2009-04-08 20:56) 

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