春の歌③そよ風② [noisy life]
♪夜のそよ風 そっとはこぶの
あたしのこころ 彼のところに
あしたも会うの すてきな彼に
あたしはとても しあわせなのよ
（「月影のマジョルカ」訳詞：漣健児、曲：A.ALSTON、歌：田代みどり、昭和３６年）
昭和３０年代に入ってティーネイジャーを音楽の世界に引き込んだのがカヴァー・ポップス。当初はロカビリーというかたちで男性シンガー中心でしたが、中盤から後半にかけてガールズの活躍が際立ってきます。
そんなカヴァー・ポップス中で「そよ風」の歌といえば、これ。
♪みつめる瞳も やさしいハートも そよ風にのって ほほえむ 「そよ風にのって」DANS LE MEME WAGON 伊東ゆかり
オリジナルはフレンチ・ポップスで、マジョリー・ノエルMARJOLIE NOEL の日本でのデビュー曲。ザ・ピーナッツもカヴァーしていましたが、伊東ゆかり盤の印象のほうが強い。のちに風吹じゅんや浅田美代子、さらには竹内まりやもカヴァー。
いかにも自転車やオープンカーで風を切っているような軽快な歌です。
伊東ゆかりのデビューは１１才のとき、昭和３３年というからザ・ピーナッツよりも早い。まさにカヴァー・ポップスの女王（多分いちばん多くうたっているのでは）。
なお、伊東ゆかりにはカヴァー曲ではないが、昭和４５年発売で詞：北山修、曲：加藤和彦の「そよかぜ」があります。
では、それ以外のカヴァー・ポップスの「そよ風ソング」を、年代順に。
昭和３５年、イタリアンポップス「月影のナポリ」で華々しくデビューし、ガールズ・カヴァーポップスのトップシンガーになったのが森山加代子。
♪淋しい気持を 微風（そよかぜ）にたくして 「グッドバイ・ジミー・グッドバイ」
３６年の小ヒット曲で、オリジナルは３４年全米でもヒットしたケーシー・リンデンKATHY LINDENの[GOODBYE GIMMY GOODBYE]。若さはつらつという曲ではなくセンチ（メートルじゃないぞ）でナイーブな曲。
森山加代子と同じ３５年にデビューしたのが田代みどり。小学６年生・１１才のローティーンで。３枚目のシングル「ビキニスタイルのお嬢さん/ベビー・フェイス」がヒット。その彼女が翌年、中学生になって吹き込んだのが上に詞をのせた「月影のマジョルカ」。
原曲はフレンチ・ポップスでコラファスCORRAFACEというシンガーがうたった[C’EST ECRIT DANS LE CIEL]。
原題は直訳すれば「それは空に書いてある」というような意味。フランス語はよくわかりません（英語だって、いやいや日本語だって）が慣用句で「運命」というような意味があるらしい。
コラファスというシンガーもよくわかりませんが、ネットで見たジャケットでは女性のよう。YOU-TUBEでは田代みどりもコラファスもありませんでしたが、坂本九のカヴァーで知られる「悲しき６０才」MUSTAPHAをうたったボブ・アザムBOB AZZAM盤がありました。この「月影のマジョルカ」も「悲しき６０才」もどこか中近東を思わせる旋律。(音だけですが、田代みどり盤をyou-tuebにupしておきました）
日本では他にスリー・グレイセス（訳詞：みナみカズみ）、若尾美代子（不明）との競作で、のちに越路吹雪（岩谷時子）もレコーディング。詞のそれぞれ違うのですが曲名はなぜか「月影のマジョルカ」（スリー･グレイセスはマジョリカだが）で統一。原詞に近い訳は越路吹雪盤だと思います。
この邦題はその前に発売されてヒットした「月影のナポリ」、「月影のキューバ」に続く月影シリーズ第３弾ということなので、「月影」は飾りでしょうが、「マジョルカ」が不明。
「ナポリ」、「キューバ」に続けば地名だろうと思われますが。
たしかに地中海にはショパンが滞在したことでも知られるマジョルカ（マヨルカ）島があり、いまでも観光島としてにぎわっているとか。「月影のキューバ」のようにシンガーの出身地だったりして。おそらくタイトリングは日本のレコード会社の担当者でしょうが。
田代みどりちゃん、のちにブルーコメッツの三原綱木と結婚して「つなき＆みどり」で活動していましたが、すぐに離婚そして引退。
しばらく見ませんでしたが、数年前歌手活動を再開、オールディーズ番組にもたびたび顔を出していました。ところが最近みかけません。どうしているのでしょうか。
渡辺プロでひと足先にデビューした伊東ゆかりに続き、３７年に中尾ミエと園まりがデビューします。そしてその年２つのテレビ番組「スパーク・ショー」と「レッツゴー三人娘」でナベプロの「三人娘」としてブレイク。折しもツイストブームの渦中でした。
その三人の中では最も年長だった園まりがうたったのが「女王蜂」。
♪そよ風 青い空 流れるうた声
昭和３８年に封切られた同名映画の主題歌。
横溝正史原作の“金田一シリーズ”で同名映画があったが、こちらはイタリア製の皮肉の利いたラヴ・コメディ。主演のマリナ・ブラディMARINA VLADY はフランス生まれで、ソフィア・ローレンSOPHIA ROLLEN やブリジッド・バルドーBRIGITTE BARDOTと並ぶ肉体派女優として、当時日本でも人気がありました。平成４年公開の緒方拳が主演した日本映画「おろしあ国酔夢譚」ではロシアのエカテリーナ二世に扮し、健在ぶりをファンに披露していました。
ところでこの主題曲ですが、実際はインストで、日本用に詞をつけてサントラ盤とは別に発売したようです。そういうケースはよくあったそうで、中には本来ないはずのテーマ音楽まで日本でつくってしまったものもあるとか。ある意味スゴイ時代でした。
童謡歌手出身の園まりのデビューは３７年。デビュー曲はウーゴ・ブランコHUGO BLANCOがつくった「鍛冶屋のルンバ」。その後４作目にやはり映画主題歌の「太陽はひとりぼっち」が小ヒット。以後「ブーベの恋人」などカヴァー曲を発表。この「女王蜂」は８枚目のシングル。
その後３９年にはオリジナルの「何も云わないで」が大ヒット。以後、「逢いたくて逢いたくて」、「夢は夜ひらく」とヒットを連発、歌謡歌手としてひとつの時代を築くことになります。
しばらく休養していたがこちらも数年前にカムバック。
当初は別人（失礼）のようでしたが、ＴＶ出演やコンサート活動を続けているうちに往年の可憐さがもどってきています。三人娘も復活したようですが、ゆかり、ミエと比べるとからだのキレがいまひとつ（またまた失礼）。
わたしのガールズ・カヴァーポップス初体験でもある加代ちゃんこと森山加代子が、
♪ティンタレーラディルンナ とうたってからおよそ半世紀。
その年の夏、逗子へ海水浴に行ったとき、海の家に加代ちゃんとそっくりのヘアスタイルをした女の子が手伝いをしていたのを覚えています。
そうです、ちょっと変わったお下げ髪。アイドルの容姿を真似るのは今も昔も。
それにしてもあれから５０年は遠いよなぁ。
ビートルズもボブ・ディランもいなくて、世界はごくごくシンプルに思えましたっけ。
＞田代みどり
パイナップルプリンセスですね。
＞つなき＆みどり
これだけ懐メロＴＶ番組が多くても「愛の挽歌」はオリジナルでは二度と聴けないのですね。「夜汽車よ故郷へ」は名曲中の名曲でした。
>園まり
「逢いたくて逢いたくて」と「夢は夜ひらく」のあいだにＢ面ヒットの「何んでもないわ」もありましたね。
＞森山加代子
彼女の全盛期が小学校低学年で「じんじろげ」「パイのパイのパイ」「ズビズビズー」等訳の分からない変な歌を歌うお姉さん歌手のイメージが強かったです。だから高校時代に「白い蝶のサンバ」で復帰してきたときは大層驚いたものでした。
by tsukikumo (2009-03-28 09:08)
以前、オールディズの番組で、三原綱木がバンマスの楽団をバックに田代みどりが歌うということがありましたよね。おもいきってデュエットしちゃえばと思いましたが、洋楽の番組でしたからね。
でも「ハロー・メルールウ」なんか二人で吹き込んでるんですけどね。
「夜汽車よ故郷へ」って聴いたことありませんが、なんとなくノスタルジックなタイトルですね。
by MOMO (2009-03-28 20:45)
コラファスはジョルジュ・コラファス（GEORES KORAFAS）はフランスの男性歌手（多分ギリシャ系）です。でっぷり超えて眼鏡をかけ、額が広いがおじさんです。曲の感じでもその方が似合っていると思いませんか？http://mischalke04.files.wordpress.com/2009/09/korafas-front.jpg をご参照！
by cnz27hiro (2012-09-08 16:41)
cnz27hiroさん、情報をありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
田代みどり盤を追加しました。
by MOMO (2012-09-11 01:15)
はじめてメールいたしますjeromeです。私も最近、歌謡曲にはまりました。
若尾美代子盤の訳詞は水島哲氏です。古いビクターのカタログ
にありました。 VS-485 1961年４月５日発売。
by jerome (2015-08-26 13:39)
jeromeさん、はじめまして。
読んでいただいてありがとうございました。
また貴重な情報をありがとうございました。
水島哲ですか、「星はなんでも知っている」ですね。
今後ともよろしくお願いいたします。
by MOMO (2015-08-26 22:45)