BLUE/青い瞳② [color sensation]
♪ 赤いキャンディ包んでくれたのは 古いNewspaper
白いペンキ何度も塗り返す 夏の風の中で……
今頃故郷のテネシーあたり 刈り入れどきさと
カタコトまじりで バルコニーからのぞくあんたは
ブロンドさえも 色褪せていた
…………
After midnight
哀しみは永遠の眠りについたかい……
After midnight
哀しみは海を渡っていったかい……
…………
(「青い瞳のステラ、1962年夏……」詞:水甫壮司、曲:上綱克彦、歌:柳ジョージ、昭和47年)
邦楽の「青い瞳」といえば、まずはGSのジャッキー吉川とブルーコメッツ。
その「青い瞳」を初めて聴いたというか、見たのは昭和40年の初め頃。わたしが洋楽に目覚めてしばらくしてからのころ。
当時フジテレビに「ザ・ヒットパレード」という音楽番組があった。
それは開局以来の番組で、昭和34年6月から45年3月までの11年あまり続いた。
この番組のユニークなところは、それまでテレビでは行われていなかったヒット曲ランキングを採用したということ。どういう選定でランキングが作られたのかは疑問もないわけではないが、こちらが無知だったのか違和感はなかった。渡辺プロダクション制作という限界もあったが。
この番組が洋楽のカヴァーポップスブームの火付け役になったことは間違いない。
そんなわけで、看板シンガー、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」などオリジナルの邦楽がなかったわけではないが、ほとんどが洋楽。
そして、そうしたヒットパレードにビートルズが登場してしばらく経った頃、「青い瞳」がチャートインしたのでした。
はじめは英語版で、レコードの発売が41年の3月なので、テレビに登場したのもその頃。個人的には“ビートルズ登場”以上に衝撃的な出来事。なにしろ洋楽のチャートの中に、和製ポップスが入ってきて1位(多分)になったのだから。
それはまたGS時代の幕開けでも。
GS第1号はどのバンドか? というとき必ず出てくるのがこのブルーコメッツとスパイダーズ。レコードデビューということではスパイダーズの「ノー・ノー・ボーイ」が41年2月なので、こちらだろうが、世間の認知という意味ではブルーコメッツの「青い瞳」。
「青い瞳」はその後日本語版も出て大ヒット。ブルーコメッツは紅白歌合戦に出場。
GSの魁になったことはもちろん、その詞の内容が非日本的というか無国籍メルヘンタッチで、それがその後のGSの流れのひとつの源になったという意味でも画期的な楽曲だったいえる。
ブルーコメッツはその後「青い渚」、「ブルー・シャトー」、「草原の輝き」、「マリアの泉」とヒット曲を飛ばし、「ブルー・シャトー」ではレコード大賞を獲ることになるのは周知のこと。
日本で青い瞳の歌がヒットするとは。もっとも大正10年に作られた童謡「青い目の人形」は昭和40年代でも知る人は多かったが、今度は人形ではない。
北ヨーロッパへ旅をしている日本人が現地の女性と恋に落ちて……、というストーリーを思い浮かべた人も少なくなく、これも時代の変化、日本の国際化といことだったのかも。
それでは、そのほかの和製青い瞳の歌を。
♪雨に六区の世は更けて 「青い眼の踊り子」淡谷のり子
イヴォンヌというフランスの踊り子をうたったタンゴ。「厚化粧もフランスごのみ……」というのがリアル。昭和26年の作。
そして柳ジョージの「青い瞳のステラ、1962年夏……」。
これは泣けてくるほどのマイ・フェヴァリットソング。いまでもときどき聴きたくなるし、聴いている。もちろん春夏秋冬季節を問わず。
横須賀あたりの少年と仲良くなった近所の外人ハウスに住む年上の女性ステラとの思い出。シチュエーションは違うが映画「おもいでの夏」SUMMER OF 42が蘇ってくるような胸にジンとくる詞。おまけにメロディーがノスタルジックで、ヴォーカルがまたいいときてる。
「青い眼……」なのに、いきなり「赤いキャンディ」で始まるのがシャレてる。
さらに「白いペンキ何度も塗り返す……」と続く。そう、「青、赤、白」とこれはアメリカの国旗のイメージ。すなわち、この歌は“アメリカ小僧”の歌。
歌詞のなかに「青」という言葉はなく、最後に「BLUE EYES 細めて」がさり気なく出てくるのがまたいい。ベタボメ。
いい歌はカヴァーされるもので、この歌も甲斐バンド、JAYWALK、BEGINなどが。
柳ジョージ、甲斐よしひろ、中村耕一。なぜかみなハスキーヴォイス。
BEGINは若すぎて、中村耕一は声がきれいすぎて、甲斐よしひろは情緒がすぎて。やっぱり柳ジョージがいちばんしっくりくる。まぁ初めての女、じゃなくて歌がいちばんということなのでしょうが。
他では玉置浩二に「蒼い瞳のエリス」とアルフィーの「サファイアの瞳」。
また聴いたことはないが、坂本真綾の「青い瞳」や森山直太郎の「青い瞳の恋人さん」なども。
厚化粧だろうが幸薄そうだろうが、やっぱり日本人にとって「青い瞳」はある種あこがれ。民俗学的かつ遺伝学的に日本人に青い瞳はないっていうのだけれど、ないものねだりかもね。
でも、たとえば「青木ひとみ」とか「蒼井眸」なんて女の人はいるんじゃないかな。それがどうした?っていわれても困るけど…………。
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