SSブログ

山②穂高よさらば [a landscape]

 

♪ 穂高よさらば また来る日まで
  奥穂にはゆる あかね雲
  かえり見すれば 遠ざかる
  まぶたに残る ジャンダルム
(「穂高よさらば」詞:芳野満彦他、曲:古関裕而、歌:ダークダックス、昭和52年)

「穂高」は北アルプスに鎮座する連峰で、北穂、涸沢、奥穂、前穂と3000m級の山々が連なっている。

わたしがこの歌を初めて耳にしたのは、昔、友人たちと上高地から焼岳へ登ったときのことだった。
途中ですれ違った数名のグループが合唱していたのだ。下山していく彼らのその歌声には、山を制覇した充実感があふれていた。
わたしが連れに「なんの歌だ」と訪ねると、彼は知っていて「穂高よさらば」だと教えてくれたのだった。

そのあと登った焼岳の山頂から美しい穂高連峰にしばし見とれた。そして、いつかあの山々に登り、下山しながら「穂高よさらば」を歌いたいと思ったものだった。
それから30年あまりが経過し、穂高の山々はわたしにとって、いまだ“まだ見ぬ恋人”のまま。

こう書いてくると、なにかわたしがいかにも“山男”のように聞こえるかもしれないが、実のところそれほどのものではない。

20歳を過ぎたころ、職場で知り合った友人が山好きだったり、幼なじみに登山をはじめたヤツがいたりと、なぜか山に登る機会が多くなっただけなのだ。いわば“お供”であり、今考えると、山に親しむというよりも、彼らのと親交を深めることが第一義的な目的だったのだと思う。しかし、彼らがいなければおそらく登山などすることはなかっただろう自分の人生を思えば、もう少し山と親しんでいればという後悔をしつつも、ただ感謝あるのみである。

「穂高よさらば」、じつは替え歌である。
本歌は「雷撃隊出動の歌」(母艦よさらば)と、タイトルもいかめしい軍歌なのだ。
昭和19年公開の映画「雷撃隊出動」の主題歌で、作曲は、「君の名は」「長崎の鐘」で知られ、当時多くの軍歌を作った古関裕而霧島昇波平暁男によってレコーディングされた。

♪ 母艦よさらば 撃滅の 翼に映える 茜雲
という詞は、米山忠雄。米山忠雄については詳らかではないが、「轟沈」(楠木繁夫)や「空の突撃路」(石井亀次郎)などいくつかの軍歌を作っている。

「穂高よさらば」はダークダックスによってはじめてレコーディングされた。
ダークダックスといえば、ロシア民謡を得意としているが、それだけでCDを出すぐらい山の歌も多くうたっている。

♪ 雪よ 岩よ われらが宿り
というアメリカのトラディショナルソング「愛しのクレメンタイン」の替え歌「雪山賛歌」
♪ 娘さんよく聞けよ 山男にゃ惚れるなよ
「山男の歌」。これも岡山県の民謡をアレンジした軍歌の替え歌。

その他「シーハイルの歌」、「雪山に消えたあいつ」、「いつかある日」、「上高地の春」など。

また「穂高よさらば」の作詞者のひとりである芳野満彦は著名な登山家。
高校2年生の冬、八ヶ岳で遭難。凍傷で両足の指を無くすというダメージを負いながら、34歳で日本人として初めて本場ヨーロッパのアルプスにあるマッターホルン北壁の登頂に成功する。

歌詞は10番ぐらいまであるとか。上に載せた歌詞の中の「ジャンダルム」とは、主峰の前にそそり立つ岩のことで、奥穂から西穂へ向かって南へ下ったところにあるそうだ。

こんなことを書いていると、無性に山登りがしたくなってきた。もう冬も近く、行くとしたら今月中。穂高はとても無理としても、足慣らしに近くの山へ行ってみようかな。そして、来年の夏には穂高か、その連峰を望める所へ行ってみたいな。

でも、休日になったら寝坊して、結局ヤマへ行かずに、ウマへ行ったりして……、嗚呼。

 


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。