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●帰り道 [a landscape]


♪ 帰り道は遠かった 来たときよりも遠かった
  雨が降ってたの 風が吹いてたの
  私の心の中にだけ あなたは知らない
  それでいいの いいの
(「帰り道は遠かった」詞:藤本義一、曲:奥村英夫、編曲:寺岡真三、歌:チコとビーグルス、昭和43年)

帰り道というのはなんとなく淋しい。♪行きはよいよい帰りはこわい 「通りゃんせ」。
それは、今日の日はさようならでも、永遠にさようならでも、とにかく別れ道である場合があるからかもしれない。

楽しい時間を過ごしたのなら、その余韻も消え、また逢いたくなってしまうような、じんわりと淋しさがしみてくる帰り道。あるいは、あのとき、なんであんなこと言ってしまったのか、とか、もっと自分の気持ちを正確に伝える言葉があったはずなのに……、というような、後悔の残る帰り道。
さらに言えば、別れを告げたり告げられたりした帰り道。後味の悪さや落胆の思いを抱きながらたどる家路。

「銀杏並木」(デューク・エイセス)では、♪恋人に遠い道はない と歌っている。それもまた真実だけど、2人の間にスキマができてしまったときの「帰り道」が遠く感じるというのもまたほんとうのこと。

その歌「帰り道は遠かった」チコとビーグルスのデビュー曲。硲(はざま)千鶴子がヴォーカルのバンドで、昭和43年末にデビュー。昭和43年といえばグループサウンズがピークを越えた年で、チコとビーグルスはいわば遅れてきたGSバンド。よくいえば、この後主流になっていく、歌謡ポップスを先取りしていた。
この半年以上前に同じ女性ヴォーカルのバンド、ピンキーとキラーズ「恋の季節」でブレイクしている。残念ながら二匹目のドジョウはいなくて、翌年「いとしのジェニー」、「新宿マドモアゼル」を出すが、そのままフェイドアウト。
なお、「帰り道は遠かった」は男性バンド、ジェノバとの競作。作詞の藤本義一は直木賞作家で、「青い犬のブルース」(田宮次郎)ほか石原裕次郎藤田まことなどの歌に詞を提供している。

他でタイトルに「帰り道」がつくのは、
「帰り道」(ふきのとう)、「真冬の帰り道」(ランチャーズ)、「来た道、寄り道、帰り道」(三田明)、「君を送った帰り道」(小坂一也)、「冬の日の帰り道」(アグネス・チャン)などがある。

歌詞に出てくるものとしては、
♪ 帰り道一人 口笛吹いて 「初恋」(村下孝蔵)
♪ 偶然をよそおい 帰り道で待つわ 「まちぶせ」(石川ひとみ)
♪ 学校帰りの道で じっと待つこの身はつらい 「個人授業」(フィンガー5)
♪ 学校帰りの森かげで 「ドリフのズンドコ節」(ドリフターズ)
などとかなりある。で、これらはすべて学校からの帰り道。そしてすべてお目当ての彼女や彼氏を待っているという設定。

そのほか、幼い頃の故郷の帰路をうたったのが、
♪歌をうたった 帰り道 「誰か故郷を想わざる」(霧島昇)
♪トンボつりした 帰り路 「オー・チン・チン」(ハニー・ナイツ)
♪小川のせせらぎ 帰りの道で 「ふるさと」(五木ひろし)
♪夢の語らいは 小麦色した帰り道 「俺たちの旅」(中村雅俊)

同棲時代の思い出の道は、
♪お風呂帰りの 夕暮れ時です 「花水仙」(八代亜紀)

草野球、おつかい、散歩なんでも自転車で帰るのが
♪日が暮れてから おうちへ帰る 「自転車に乗って」(高田渡)

サラリーマンの会社帰りの道というのもあってもいいはず。ありました。
♪日暮れて 辿るは わが家の 細道 「青空」(二村定一)
♪どこかの街へと 夕陽も帰る 「夕焼けレッドで帰りましょう」(キング・トーンズ)
♪会社帰りのお土産は タンクに飛行機乳母車 「九チャンのツンツン節」(坂本九)
♪帰りに買った福神漬けで ひとり淋しく冷飯食えば 「これが男の生きる道」(クレー
ジー・キャッツ)

帰り道、どこへ行ってきたのかはいろいろだけど、帰るところはただひとつ。今日一日、楽しかったことも、嫌な思いも、みんな夜陰に溶けてしまう。だからなんとなく淋しくもあり、ホットもする。で、この帰り道の行き着く先は狭いながらもマイ・ホーム。
たとえ、誰も待っていてくれる人がいなくても、冷え冷えとした部屋であっても、玄関で靴を脱いで腰を下ろせば、とりあえず「ヤレヤレ」なのである。


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