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夏の歌⑦想い出の渚 [noisy life]

 

♪ 君を見つけた この渚に
  ひとりたたずみ 思い出す
  小麦色した 可愛いほほ
  忘れはしない いつまでも

  水面走る 白い船
  長い黒髪 風になびかせ
  波に向かって 叫んでみても
  もう帰らない あの夏の日
(「想い出の渚」詞:鳥塚繁樹、曲:加瀬邦彦、歌:ザ・ワイルドワンズ、昭和41年)

「渚のボードウォーク」のように“渚”は夏の歌の重要なキーワードです。では、「渚」という言葉は歌の世界でいつごろから使われるようになったのか。
実は戦前の歌にも「渚」は出てきます。

「常夏の島」(藤山一郎、昭和8年)♪渚々に 鳥が啼く
「黄昏の南海」(林伊佐緒、昭和15年)♪宵のひととき 渚を行けば
「海行く日本」(長門美保他、昭和17年)♪椰子の渚に 氷の海に

上の3つの曲はいずれも、日本ではなくサイパンなどの南の島を舞台にした歌。つまり、「渚」という言葉には、たんに波打ち際とか海辺というだけでなく、“外国の”というエキゾチックな意味合いが含まれていたようです。ですから当時は、砂浜、磯、海辺、白浜などの語彙が一般的でした。だいたい夏のデートスポットあるいはレジャーは海、なんていう時代ではなかったのですから。

戦後、心身共に解放された日本人は、夏になると海へ山へと出かけるようになります。物心ともに余裕ができたんですね。夏に海や山へ行かないヤツは現代人じゃないみたいに旅行会社や各地の観光協会が煽るんですね。それはともかく。

流行歌のほとんどはラブソングなので、失恋であれ、恋愛進行形であれ、海は二人のドラマの背景としてあるのです。そんなとき「海辺の二人」や「磯の恋人たち」っていうのもどこかロマンチックじゃない。いまでいえばダサイ。そこで出てきたのが、かつて南方の島のイメージだった「渚」。「渚の二人」なんてなんとなく、カッコイイ。

戦後の流行歌でいつごろから「渚」が出てきたのか、正確にはわかりませんが、比較的早いと思われるのが昭和25年の「さくら貝の歌」(岡本敦郎)。♪うつし世の なぎさに果てぬ と歌われています。その他、昭和32年の「十代の恋よさようなら」(神戸一郎)でも♪月の渚を さまよえば というのがあります。

しかし、頻繁に「渚」が使われだすのは、昭和30年代から40年代にかけて。その先陣を切ったのがミッキー・カーチス「月影のなぎさ」。これはアンソニー・パーキンスをカヴァーしたもの。ほかに「渚のデイト」(伊東ゆかり他)、「白い渚のブルース」(スリー・グレイセス)、「渚のボードウォーク」などのカヴァー曲によく使われました。

そして“ブレイク”するのがグループサウンズ時代。
昭和41年の「青い渚」(ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)を皮切りに、「想い出の渚」(加瀬邦彦とワイルドワンズ)、「遠い渚」(シャープ・ホークス)、「夕陽の渚」(オールスター・ワゴン)、「渚に消えた恋」(サベージ)、「二人だけの渚」(ジャガーズ)、「夕暮れの渚」(ポニーズ)、「孤独の渚」(パープル・シャドーズ)と、渚は大混雑。
♪朝の渚に と歌詞の中に出てくるのはスパイダース「真珠の涙」。GS風ということでは、美空ひばりの「真赤な太陽」でも♪渚を走る とか ♪渚に消えた という歌詞があります。

ワイルドワンズはスパイダースブルー・ジーンズにいた加瀬邦彦が昭和41年に結成。「想い出の渚」はその年発売のデビュー曲。

以後、波打ち際の代名詞は砂浜、海辺から軽くてポップな「渚」に変わります。
「渚のシンドバッド」(ピンクレディー)、「渚のバルコニー」(松田聖子)、「渚のはいから人形」(小泉今日子)、「渚にまつわるエトセトラ」(パフィー)とヒット曲が続くのはごぞんじのとおり。
もちろん、日本の“ビーチボーイズ”、サザン・オールスターズチューブの歌でも必須アイテムとしてたびたび登場してきます。

そういえばもう何年も渚に行っていないな。真昼のあの人ごみには辟易だけど、人影がまばらな夕方の渚へ行って潮騒を聞きながら、暮れきるまで海を見ているってのもオツなものです。夕闇にサーファーがひとりだけ、飽きずに板に乗っていたりして。
そういえば、サーフィンの歌もありますね。いくつか知っていますが、「アーパー・サーファー・ギャル」なんておかしな歌もありました。「わらの中の七面鳥」のメロディーでね。♪あたまの中身は トロピカル っていうのがいいです。
それを歌っているのがなぎさけんいち、じゃなくてなぎらけんいち
おあとがよろしいようで、テケテンツクテン……。


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deacon_blue

☆ あたしら世代では,『遠い渚』だと,トレイシー・ソーンですね(^o^)。

http://www.excite.co.jp/music/disc/4988004102202/
by deacon_blue (2007-07-14 11:21) 

MOMO

残念ながら「遠い渚」も「トレイシー・ソーン」も初耳です。
ジェネレーションの隔たりはいかんともしがたいです。もちろん、共感できる部分もあるにちがいないのですが。
by MOMO (2007-07-15 21:40) 

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