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夏の歌①夏よお前は [noisy life]

 

♪ 夏よ つれない夏よ
  お前だけは 知って いるだろう
  星影を 照りかえす 岩陰のこと
  瞳の きれいな 若者だから
  たわむれの 恋にさえ いつしか溺れる
  um…… um…… 夏よ
(「夏よお前は」詞:麻生ひろし、曲・井上かつお、歌:ベッツィ&クリス、昭和45年)

夏です(まだ梅雨だというこのタイミングのわるさ)。しばらくは、わたしの好きな“夏の歌”をいくつかとりあげて、とりとめのないことを書いてみようと思います。ちなみに春夏秋冬でいえば、夏の歌がいちばん多いですね。

まずはじめはベタですがベッツィ&クリスの「夏よお前は」から……、ってDJ気取ってどうすんの。

ベッツィ&クリスは昭和44年「白い色は恋人の色」でレコードデビュー。
ベッツィ(エリザベス・バージニア・ワーグナー)と、クリス(クリスティーン・アル・ロルセス)はハワイのハイスクールに在籍するフォーク・デュオ。昭和44年、シングアウトのグループ“サウンズ・オブ・ハワイアン”として来日、その透き通った声と美しいハーモニーが評判となり、スカウトされた。ギターとピアノの違いはあるが、いまでいえばKiroroといった感じ。

デビュー曲は「白い色は恋人の色」。その年に解散したフォーク・クルセダーズ加藤和彦が曲を作り、北山修が詞を書いた。のちに「あの素晴らしい愛をもう一度」の大ヒットを飛ばす2人の、“フォークル”以外での初ヒットになった。この「白い色―」は、オリコンの2位までランクアップした。

ベッツィ&クリスはこの歌で日本のフォークシーンに存在感を示し、その勢いをかって翌年に発売されたのが「夏よお前は」。この年には他に「花のように」(加藤―北山コンビ)も出ているが、「花のように」や「白い色―」がいかにもフォーク調であるのに対して、この「夏よ―」は、その頃流行っていたポップス歌謡という印象。
作曲の井上かつおの最大のヒット曲が、まさにポップス歌謡の「白い蝶のサンバ」(森山加代子)。作詞の麻生ひろしは寡作?で、ほかにスパイダース「エレクトリックおばあちゃん」が知られています。

昭和45年(1970)という年は、大阪万博と日航機よど号ハイジャック事件に象徴されるでしょう。つまり経済発展の金字塔である万博はエンドレスの発展を夢見る“祭り”であり、よど号事件は終焉が近づいた学生運動、革命運動の“残り火”でした。

そんな世相の中、流行歌の世界では時代と併走できなかったグループサウンズが完全に終わってしまい、藤圭子、ちあきなおみ、森進一らの演歌による巻き返しが。しかし、主流となったのは前年のピンキーとキラーズ「恋の季節」、いしだあゆみ「ブルーライト・ヨコハマ」、由紀さおり「夜明けのスキャット」、弘田三枝子「人形の家」などに代表される歌謡ポップスでした。
45年のヒット曲を拾ってみると、「白い蝶のサンバ」(森山加代子)、「愛は傷つきやすく」(ヒデとロザンナ)、「手紙」(由紀さおり)、「希望」(岸洋子)、「京都の恋」(渚ゆう子)など。
歌謡曲(演歌)があり、歌謡ポップスがあると、あとはポップス。これがフォークソング。

日本のフォークソングの発芽がいつだったのかは諸説ありますが、キングストン・トリオの来日(昭和36年)、ブラザース・フォアの来日(昭和37年)以前でなかったことは確かでしょう。その数年後、この2つのモダン・フォーク・グループが再来日した昭和40年には学生の間でフォークはかなり浸透していたはず。それでも、すべてアマチュアで、いわゆるレコードによるメジャーデビュー、およびテレビやラジオのメディアに頻繁に登場するようになったのは、昭和41年。その先鞭をつけたのがマイク真木「バラが咲いた」

この「バラが咲いた」は、作詞作曲が浜口庫之助ということでもわかるとおり、歌謡曲ファンもターゲットとしたフォークソング。いわば歌謡フォークあるいはフォーク歌謡といえるもの。

同じアメリカのモダン・フォーク・ムーヴメントの中でもP.P.M.ピート・シーガーに代表されるメッセージ性の強い、あるいは反戦を訴えるプロテスト・ソングに影響されたフォーク・シンガー、フォーク・グループはテレビメディアやメジャーのレコード会社とは一線を画して、コンサート中心の活動を続けた。そんな中から、高石友也、高田渡、岡林信康らが出て、彼らは独自のレコード会社URCを立ち上げ、生の声をファンに発信していきました。
ややこしいですが、そのプロテスト・フォークと歌謡フォークの中間も存在した。それがフォーク・クルセダーズや、はしだのりひことシューベルツなど。

ずいぶん前置きが長くなりましたが、そういう状況のなかでベッツィ&クリスは44年にフォーク・デュオとしてデビュー。上のような分け方でいうと、ベッツィ&クリスのデビュー曲の「白い色は恋人の色」や「花のように」は“中間フォーク”で、「夏よお前は」は歌謡フォークという印象。

ベッツイのほうはときどきテレビのナツメロ番組に登場し、衰えぬ美声を聞かせてくれます。ただ歌うのはいつも「白い色は―」の方。たまには「夏よ―」も聴いてみたい。


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