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『誰かとめてよ ムード歌謡』 [noisy life]


♪ 女に生まれて来たけれど 女の幸せまだ遠い
  せっかくつかんだ愛なのに 私のほかにいい人いたなんて
  どうにもならない愛だとわかっていても
  お嫁にいきたい あなたと暮らしたい
  馬鹿ね 馬鹿ね よせばいいのに
  だめなだめな ほんとにだめな
  いつまでたっても だめな私ね
(「よせばいいのに」詞、曲:三浦弘、歌:敏いとうとハッピー&ブルー、昭和54年)

ムード歌謡(だけとは限らないけど)に、よくある傾向が“女歌”をうたうこと。「別れても好きな人」ロス・インディオス&シルヴィア のように女性ヴォーカルをフィーチュアしてではなく、男性ヴォーカルが女性になりきってうたうのです。

昭和40年代のムード歌謡ブームのきっかけとなった「ラブユー東京」黒沢明とロス・プリモス がそうだし、内山田洋とクールファイブでいえば「長崎は今日も雨だった」にはじまって、「噂の女」、「逢わずに愛して」、「東京砂漠」、「そして神戸」とヒット曲のほとんどがそう。
ほかでは、上にあげた「よせばいいのに」をはじめ、同じく「わたし祈ってます」敏いとうとハピー&ブルー、「惚れたって駄目よ」和田弘とマヒナスターズ、「足手まとい」森雄二とサザンクロス、「知りすぎたのね」ロス・インディオス とまあよくここまで。

ソロ歌手でも「抱擁」(箱崎晋一郎)、「あなたのブルース」(矢吹健)、「想い出迷子」(チョー・ヨンピル)、「そんな女のひとりごと」(増位山太志郎)、「ホテル」島津ゆたか、「うそ」中条きよし がそうだし、美川憲一「釧路の夜」「さそり座の女」が、……これは少しちがうか……。

とにかく、ムード歌謡は“大倒錯歌謡”といってもいいほど。
以前も書き込みしたような気がしますが、男が女になりきって、あるいはその逆に女が男の気持を歌うという“倒錯ソング”は多分日本独自のもの。もしかしたらアジアのどこかの国にはあるかもしれないが(京劇の中国はどうなんでしょう?)、少なくとも欧米あるいは南米の歌では聞いたことがありません。
日本には古くからの歌舞伎の伝統があり、虚構としてそういう“倒錯”を不自然なものと思わないという共通の認識があるから、というのはひとつの説明ですが、はたして歌舞伎を見ない現代人も、ムード・コーラスグループの男性ヴォーカルがステージやテレビで♪分かってくださいますね~ などとシナを作って歌う様子を不自然とは思わないのだろうか。

Jポップではどうなのかな、あまり男が女の子になりきって歌うって聞かない。って、そんなに聴いているわけではないのですが。ただ、最近、題名とシンガーは忘れてしまった(実は覚えられない)けど、女性シンガーが“ボク”と歌っていました。宝塚美空ひばりの股旅ものならともかく、女性シンガーの倒錯ソングというのは、「無法松の一生」などのカヴァーソング以外ではそうはない。Jポップにはまったく不明だけれど、それが常識なのでしょうか? だったら男性シンガーの“女歌”もある? まさか。

まあ、あってもいいんです。いえ、あったほうが面白い。シンガーにとって歌が演じることならば、倒錯は最高のACTIONではないですか。それを声をひっくりかえして歌ってみせるムード歌謡のヴォーカルたちは、素晴らしき“演技者”ではありませんか。ただ、「やめてくれ!」と言いたくなるケースもあるけど。それは、そのヴォーカルの力量の問題でしょう。


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Ma-toshi

つぎは「お笑い」から「ムード」へでお願いします(^^)
by Ma-toshi (2007-06-15 22:41) 

deacon_blue

☆ いやこれがあるのだフォークなら。
典型的な一曲「恋」(松山千春)。

☆ 1970年代半ばまでのムード歌謡はイコール有線放送でした。あたしの地区のラジオでやっていた歌謡曲のランキング番組は,有線放送ベスト20の日だけ,ほかの日と全く違う曲のオンパレードで当時は非常に萎えました(爆笑)。そのせいでいろんな歌謡曲を知ることが出来たので,世の中何が幸いするか分からない(再爆)。

☆ 70年代のソロ歌手で女心と来れば中条きよしのデビュー三連作でしょう。あれを聴けば「夜の蝶」が何だか良く分かると思っていたマセガキでした(自爆)。
by deacon_blue (2007-06-16 00:45) 

MOMO

Mashi☆Toshiさん、

とめていただいて、ありがとうございます。
まあ、おおむね右から左へ聞きしていただけたと思いますが、最後のわるあがきをしてしまいました。ご容赦を。


deacon_blueさん、

松山千春はデビュー曲「旅立ち」もそうですね。
さだまさし(グレープ)にもありますし、因幡晃、井上陽水、かぐや姫、アリス、長渕剛……ってほとんど?。吉田拓郎は見あたらないけど。
中条きよしはそうでしたし、演歌も多いですね。森進一、細川たかし、五木ひろし、小林旭……。北島三郎ぐらいか。さぶちゃんはビジュアルで無理だったのかも。
みんな“女装趣味”があるんだ。気持分かるな。2種類の人生を生きられるとしたら、こんなおもしろいことはありませんから。
by MOMO (2007-06-17 21:50) 

deacon_blue

☆ MOMOさん。拓郎は基本的に詞を書かないから。。。あとこうせつも他人に書いてもらった詞が多い。長渕は最初の路線を放棄してからああいうことになったと思います。それはそれで潔いと思うけど。

☆ サブちゃんは「○○の女」シリーズをやった以上,女心を求める男心になるのはしょうがないでしょうね。
by deacon_blue (2007-06-17 22:35) 

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