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『しつこいですが ムード歌謡』 [noisy life]

 

♪ 七色の虹が 消えてしまったの
  シャボン玉のような あたしの涙
  あなただけが 生きがいなの
  忘れられない
  ラブユー ラブユー 涙の東京
(「ラブユー東京」詞:上原尚作、曲:中川博之、歌:黒沢明とロス・プリモス、昭和41年)

青春歌謡のあとは、グループサウンズにフォークソング。昭和30年代後半から40年代初頭にかけて流行歌の世界は完全にニューエイジが主導権を握りました。
“歴史と伝統”を誇る(というほどでもないか)、戦前からの歌謡曲の世界、つまりアンシャンレジームは防戦につとめざるをえなくなります(大袈裟だね)。その切り札が“演歌”。それまで歌謡曲とか流行歌と言っていた“はやり歌”を演歌というジャンルで囲ったわけです。それが良かったのかどうか……。演歌を字面で語れば、明治時代までさかのぼらなければなりませんが、そうなると戻って来られなくなるので、いずれ機会を見て(多分ないな)ということで。

わたしの“わらしべ”のような記憶に頼れば、“演歌”という言葉が言われだしたのは、都はるみ「涙の連絡船」(昭和40年)あたりからだったような。その後、45年に「圭子の夢は夜ひらく」藤圭子が大ブレークしたあたりで“演歌”が完全に定着したような気がします。

ところで、戦後歌謡曲の主流「望郷歌謡曲」はどうなったのか。昭和41年に加賀城みゆき「おさらば故郷さん」を発表。まさにこれが「望郷歌謡曲」の終焉を告げる象徴的な歌だったのかもしれません。では「都会調歌謡曲」は?

経済が豊になれば、夜の街も栄えます。ナイトライフもますます盛んになり、そのBGMともいえるムード歌謡は、主流にはなれずとも、なんとか生き延びていました。
吉田メロディー以外でも、そうした都会の大人の雰囲気を歌った流行歌がなかったわけではありません。その代表的な歌手が石原裕次郎

昭和40年の「二人の世界」は、まさにムード歌謡のキーワードのひとつである“ナイトクラブ”を舞台にした大人の歌。昭和30年代、タフガイと呼ばれた若者の兄貴分・裕次郎も10年の時を経て“夜の紳士”へと成長していきます。

また、吉田正以外の作曲家でいうと鈴木道明。40年に「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」(越路吹雪)、「夏の日の想い出」(日野てる子)、「赤坂の夜は更けて」(島倉千代子)、「女の意地」(西田佐知子)と、立て続けに都会調の曲がヒット。鈴木道明は当時、TBSのプロデューサー兼ディレクターで、テレビやラジオでジャズの番組を手がけていました。

そして、昭和41年に元ハワイアン・バンドにいた黒沢明が作ったコーラスグループ、ロス・プリモス「ラブユー東京」が大ヒット。この年は加山雄三「君といつまでも」で大ブレイクし、ジャッキー吉川とブルーコメッツ「青い渚」によってGSブームの幕が切って落とされた年。日本の流行歌豊饒の年でした。

ロス・プリモスの成功によって、コーラスグループが続々と出てくることになります。42年には、鶴岡雅義と東京ロマンティカ「小樽のひとよ」、43年にはロス・インディオス「コモエスタ赤坂」、中井昭とコロラティーノ「思案橋ブルース」、44年は内山田洋とクールファイブ「長崎は今日も雨だった」というように。名前からしてラテンが香ってくるグループが多いこと。

これらのコーラスグループがうたう歌は、必ずしも都会の夜をうたったものばかりではありませんでしたが、なぜかムードコーラス、あるいはムード歌謡と呼ばれるようになります。それは彼らがデビュー前、クラブやキャバレーのステージで歌っていたので、そういう雰囲気を持っていたからではないでしょうか。

厳密に「ムード歌謡」という言葉がいつ頃から使われたのかははっきりしませんが。昭和45年(1970)には雑誌などでも使われているので、多分、ロス・プリモスやクールファイブが頻繁にメディアに出るようになった昭和40年代前半ではなかったかと思われます。

なお、この時期、ムード歌謡を歌っていたソロシンガーとしては、松尾和子「銀座ブルース」、青江三奈「伊勢佐木町ブルース」、矢吹健「あなたのブルース」、美川憲一「釧路の夜」、箱崎晋一郎「熱海の夜」、斎条史郎「夜の銀狐」らがいます。

そして時代は昭和50年代へ。


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Ma-toshi

ムード歌謡曲には、3連も多いのですが、もっと多いのがビギンのリズムですね。

ズチャーチャ、ズチャ、ズチャ なな~いろの虹が~
ズチャーチャ、ズチャ、ズチャ ソ~ロ・グリース、デラ・ノーチェ~
・・・・・コモエスタ・セニョ~ル~
・・・・・きみ~の、よこがお~

「ワン・レイニー・ナイト・・・」はピーナッツ
「赤坂の夜は更けて」は西田佐知子
で、覚えてます(^^)
by Ma-toshi (2007-06-13 23:16) 

MOMO

なるほど、そうですね。

ビギンもラテンのリズムとしては古いですね。
日本人も好きなリズムですよね。
by MOMO (2007-06-14 21:55) 

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