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[しんき臭い] [ozolagnia]

 

♪ 芸のためなら 女房も泣かす
  それがどうした 文句があるか
  …………
  「そりゃわいはアホや、酒もあおるし女も泣かす。
   せやかて、それもこれもみんな芸のためや。
   今にみてみい! わいは日本一になったるんや
   日本一やで、わかってるやろ、お浜
   なんや、そのしんき臭い顔は、
   酒や! 酒や! 酒買うてこい!」
(「浪花恋しぐれ」詞:たかたかし、曲:岡千秋、歌:都はるみ、岡千秋、昭和58年)

「しんき」は“辛気”で、心が晴れない、くさくさすること。読んで字の如く〈つらい気持〉のことかというと、そうではないから日本語は難しい。臭いは強調の意味だが、「しんき臭い」として使われることが多く、その場合は〈じれったい〉とか〈イライラする〉という意味になる。これも最近はあまり聞かなくなった言葉。

歌のなかの亭主は女房の何を「しんき臭い」と感じたのだろうか。たぶん、お浜が亭主の横暴に耐えている顔や態度にイラついたのだろう。でもその女房は2番のセリフの中で、亭主が日本一の噺家になるためなら「どんな苦労にも耐えてみせます」と宣言する。そして、掛け合いの3番では、亭主はお浜を“恋女房”と言い、女房は亭主を“生き甲斐”と言って、笑うふたりに春が来るのである。
ご存知のように、これは関西の落語家・桂春団治をモデルにした歌で、実際春団治はかなりの遊び人だったらしい。実際のお浜さんがどういう女房だったかは知らないが、いまどきこんな女房はいない。かつてはいたのかもしれないが、女権が確立されつつある昨今、絶滅しているのではないか。ホントにしんき臭いと感じるのは、女房が横暴な亭主にひたすら耐えていることだろう。
だいたい、歌の歌詞どおりに自分勝手な亭主だったら、まず暴力もふるっているはず。そうなれば、現代ならドメスティック・バイオレンスなどといって、即離婚につながる。文句ひとつ言わず、ただひたすら付き従う女房。これは男の勝手な願望で、まあ、せめて歌の世界なので勘弁してくれというとことだろう。
芸者の唄は数多あるが、芸人、とりわけ落語家が主人公という歌はめずらしい(ほかに知りません)。破天荒で、伝説化している噺家は何人かいるが、やはり流行歌にはなりにくい。ほかの芸人でも「サーカスの唄」(松平晃)と「越後獅子の唄」(美空ひばり)ぐらい。比喩的な「公園の手品師」(フランク永井)などもあるが。

ほかに流行歌の中で「しんき臭い」という言葉が使われていないか、探してみたがみつからなかった。ただ、“じれったい”とか“イライラ”するはあった。どんなワガママ野郎かと思えばなんと女性。そう、そのワガママ女とは中森明菜のこと。「少女A」では“じれったい”を連発しているし、「十戒」では♪限界なんだわ 坊やイライラするわ と超強気。さすが中森明菜の本領発揮、か。


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