『ワルツ①』 [noisy life]
I was dancin' with my darlin' to the Tennessee Waltz
When an old friend I happened to see
I introduced her to my loved one
And while they were dancin'
My friend stole my sweetheart from me.
I remember the night and the Tennessee Waltz
Now I know just how much I have lost
Yes, I lost my little darlin' the night they were playing
The beautiful Tennessee Waltz.
([TENNESSEE WALTZ]words and music by RED STEWART, PEE WEE KING, vocal by PATTI PAGE, 1950)
「ワルツ」は三拍子の楽曲あるいは舞曲のこと。その起源は18世紀、オーストリアのレントラーという四分の三拍子の民族舞踊だといわれています。それが、「ワルツ」と名を変えてあっというまにヨーロッパ全土に広まったとか。つまり大ダンスブームが起こったのです。それに影響されたシューベルト、ショパン、ヨハン・シュトラウスといったクラシックの音楽家たちがこぞって曲を作ったわけです。したがって「ワルツ」は元々ダンス・ミュージック。日本ではワルツのことを「円舞曲」と書きます。日本でも文明開化と同時に、鹿鳴館で夜な夜な行われていた舞踏会では、頻繁にワルツが演奏され、踊られたはずです。つまり、戦前までは「ワルツ」といえば、クラシックがほとんどでした。
しかし、個人的にはワルツといえばなんといっても“女王”パティ・ペイジPATTI PAGE。
かの有名な「テネシー・ワルツ」TENNESSEE WALTZをはじめ、「チェンジング・パートナーズ」CHANGING PARTNERS、「小犬のワルツ」THE DOGGIE IN THE WIDOW、「涙のワルツ」I WENT TO YOUR WEDDING、[LONGING TO HOLD YOU AGAIN]などなど、泣けてくる歌ばかり。そのライナーノーツによると、彼女は1927年生まれ。「テネシー・ワルツ」をヒットさせた時は23歳。現在80歳。いまだ現役なのでしょうか。
ところで「テネシー・ワルツ」はカントリーなのか、ポップスなのか、はたまたジャズなのか。オリジナルは作詞作曲のレッド・スチュワートとピー・ウィ・キングが歌ったカントリー・ソング。パティ・ペイジもデビュー当初はカントリーをたくさん歌っていたのでやはりカントリー・ソングになるのでしょう。それを裏付けるように、スリム・ホイットマンやジム・リーヴス、パッツィ・クライン、あるいはエミルー・ハリスなどたくさんのカントリー・シンガーがレコーディングしています。日本のカントリー・シンガーもそのほとんどが歌っているのではないでしょうか。
パティ・ペイジはのちに、[WOULD I LOVE YOU]や[MOCKIN' BIRD HILL]などをヒットさせ、ポップシンガーあるいはジャズシンガーの側面が強くなったため、日本では「テネシー・ワルツ」をポップスにジャンル分けすることが多いようです。似たようなケースではレイ・チャールズの「愛さずにはいられない」I CAN'T STOP LOVING YOU があります。この歌も元はドン・ギブソンの自作自演によるカントリー・ソングでした。
しかし、アレンジによっていかようにも聞こえるし、あえてジャンルにこだわらなくてもいいのかも。
「ワルツ」の名曲は「テネシー・ワルツ」ばかりではありません。テネシーならぬ[KENTUCKY WALTZ][WALTZ OF THE ANGEL]、[NEW PARTNER WALTZ]、[WALTZ OF THE WIND]など、とりわけダンスがつきもののカントリーには多いようです。ポップスでも「思い出のワルツ」TILL I WALTZ AGAIN WITH YOU や「ラスト・ワルツ」LAST WALTZ 、「ロックン・ロール・ワルツ」ROCK AND ROLL WALTZ、「魅惑のワルツ」FASCINATIONなどよく知られた曲があります。そしてジャズではビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」WALTZ FOR DEBBY。姪のために作ったという有名なジャズピアノはサラ・ヴォーンやヘレン・メリル、あるいはトニー・ベネットのヴォーカルで聴くこともできます。
もう一度パティ・ペイジに。手元に彼女のベスト盤があります。はじめにあげたヒット曲の他、[RELEASE ME],[MACK THE KNIFE],[MEMORIES OF YOU],[LOVER COME BACK TO ME]などのスタンダードナンバーがつまっています。ときどきこのCDを聴くと、なぜか未生だったGOOD OLD DAYS の1940~50年代が“甦って”くるのです。
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