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【B・G(ビージー)】 [obsolete]

『「もし。お嫌でなかったら、弟のことで、聞いてくださいません?」
「いいとも」
「弟が、恋愛をしているらしいんです」
「ほう。いくつだったっけ?」
「まだ、二十二歳なんです」
「二十二歳なら一人前だよ」
「相手は小沢咲子さんといって、母一人娘一人の貧しいB・Gなんです」
(「御身」源氏鶏太、昭和36~37年)

「B・G」(ビージー)はビジネス・ガールの略。この小説「御身」でも「弟は……二十一、二歳のビジネス・ガール風の娘と一緒だった」というように、略さず表記しているところもある。一般的にはやはり「ビージー」と使われることが多かった。戦後の言葉で昭和25年頃から和製英語として使われはじめた。
ところが、この小説が出た翌年、NHKが「B・Gは売春婦に通じるBargirlと誤解される」として放送禁止用語にした。それを受け雑誌「女性自身」が読者から代替語を募集し、O・L(オーエル)つまりオフィス・レディが採用された。ちなみにそのときの第2位がオフィス・ガール、第3位がサラリー・ガール。
「B・G」の寿命はほんの10数年だった。B・Gも和製英語、O・Lも和製英語。ならば「NHKさん、そんなに神経質にならずにB・Gでもよかったのでは」という意見もあった。昭和44年公開の「男はつらいよ」第1作で、寅さんは妹・さくらを紹介するのに「丸の内でビージーやってるんだけどね」と言っている。

「御身」はいきなりラブ・ホテルのベッドからという、源氏鶏太にしてはかなり大胆な導入部分。弟が会社の金30万円を紛失したため、ある会社の社長と半年間の売春契約をする健気な姉が主人公。それまでの源氏鶏太の作品では、男が金は渡すが、身体は要求しないとか、土壇場で紛失した金が出て来て、というパターンが常套だが、この「御身」ではそうではない。ヒロインは恋人がありながら、徐々に契約した社長に魅かれていく。そこへヒロインと同じように貧しさから上司との売春を続ける弟の恋人が登場したり、物語は複雑になっていく。こういう設定だと悲劇的結末も予測できるのだが、そこは源氏鶏太。ものの見事な割り切り方でハッピーエンド。なんとなく読み終わって苦みが残らないわけではないが、そこにリアリティがあるのかも。
「御身」は婦人公論に連載されたもので、昭和30年代の後半ともなると、“婦人”たちはこういうやや刺激的なストーリーを望んでいたのかもしれない。


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