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TALKIN' ABOUT THAT RIVER [story]


♪ ねえ君 二人で何処へ 行こうと勝手なんだが
  川のある土地へ 行きたいと思っていたのさ
  街へ行けば人が死ぬ 街へ行けば人が死ぬ
  今は君だけ思って生きよう
  だって人が狂いはじめるのは
  だって狂った桜が散るのは三月

「桜三月散歩道」(詞・曲・歌・井上陽水、昭和48年)。LP「氷の世界」に入っていた1曲です。たしか「氷の世界」はLPで初めて100万枚セールスしたのではなかったかな。あまりラジオやテレビで見聞きした記憶がないのは、1~3番を通じて「狂う」という言葉が出てくるからでしょうか。マスコミの自主規制ですか。考え過ぎかな。

この歌が聴こえてきたとき、私はちょうど一人暮らしをはじめたばかりでした。男でも女でも、初めての一人暮らしっていうのは、人間として独立する喜びと不安を抱いているものでしょう。また、どんな街のどんな部屋にするのかを決めるのもワクワクしたものです。
引っ越しを終え、掃除も済まして初めての夜。蒲団の上で手足をめいっぱい伸ばします。ひとりでに笑みが浮かんできます。本当の自由を獲た、そんな気持でした。

ところでわたしのアパート選びの条件。現実的なものとしてはまず家賃5000円、部屋の広さ6畳。実際は家賃6000円の所になったのですが。その条件に合うアパートを見つけるのはさほど苦労しませんでした。でも、他にも譲れない条件が2つありました。まず、街の名前が美しいこと。これはかなり主観的な選び方です。で、わたしが美しいと思ったのは東村山市の「秋津」。別に日本の古名の秋津島から連想したわけではありません。強いて言うなら岡田茉莉子が悲しくも美しかった映画「秋津温泉」(監督・吉田喜重)のイメージがあったのかもしれません。もちろん秋津温泉は架空の温泉で、秋津に温泉などないのですが。
もうひとつの条件はアパートの傍に川が流れている所ということ。わたしが育った所にも川はありましたが、たいていは堤を混凝土で固めた都会の川。そうではなく、わたしが住みたいと思ったのは、堤が草木に覆われた川です。それもせせらぎではなく、そこそこの川幅をもった流れ。わたしが借りたアパートの裏には、秋津と埼玉の所沢を区切るように柳瀬川というまさに希望どおりの川が流れていました。休日は徒歩や自転車で川沿いを散歩したものでした。
そうして選んだアパートで陽水のこの歌を聴いたとき、♪川のある~ という部分にとても共感したというわけです。結局そのアパートには5年あまり住んでいましたが、今思えば色々なことがあってとても凝縮された5年間でした。それはまた別の話ですが。

あれから30年あまりが経ち、一度も訪れたことはないけれど、秋津もずいぶん変わってしまったことでしょう。そういえばそのLP「氷の世界」は、当時付き合っていた彼女に貸したまま。彼女とは音信不通。まあ、1枚のレコードと想い出を交換したと思えば安いものですが。


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